個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、厚生局の医科の個別指導での指摘事項(届出事項、掲示事項、一部負担金、領収証・明細書、保険外負担、診断群分類、傷病名)をご説明します。
指摘事項は、東北厚生局の公表資料「平成27年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項(東北厚生局,平成29年2月)」に基づいています。
厚生局の個別指導に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
19 事務的取扱い
1 届出事項
@届出事項に変更がある場合は、速やかに変更届を提出すること。
例:病床の減、診療科目、診療日、診療時間、勤務医
A施設基準の届出に辞退届の漏れがあったので速やかに提出すること。
例:小児科外来診療料、夜間・早朝等加算、患者サポート体制充実加算、退院調整加算
B患者サポート体制充実加算を算定しているが、相談窓口に配置される職員に変更がある場合は、速やかに変更届を提出すること。
2 掲示事項
@保険医療機関である旨院内掲示すること。
A次の施設基準の届出事項について、掲示漏れが認められたので改めること。
例:明細書発行体制等加算
:在宅療養実績加算
:ニコチン依存症管理料
:在宅がん医療総合診療料
:がん治療連携指導料
:コンタクトレンズ検査料1
:CT 撮影及びMRI 撮影
:運動器リハビリテーション料(V)
:透析液水質確保加算2
:別添1の「第9」の1の(3)に規定する在宅療養支援診療所
:在宅時医学総合管理料又は特定施設入居時等医学総合管理料
B療養の給付と直接関係のないサービスに係る費用について、保険医療機関内の見やすい場所に掲示すること。
C届出を行っている診療時間を正しく掲示すること。
D明細書発行体制に関して、算定した診療報酬の区分・項目の名称及びその点数または金額を記載した詳細な明細書を患者に無償交付している旨を院内掲示すること。
E訪問診療に係る掲示が訪問診療と往診が区別されておらず、誤解を与える内容となっているので改めること。
3 一部負担金に係る事項
@一部負担金に係る事項について、次の事例が認められたので改めること。
ア 自家診療分において、一部負担金が徴収されていない例(一部負担金については、原則すべての患者から徴収すること。)
イ 審査支払機関等の査定等で減額になった場合に、患者へ一部負担金が返還されていない例
ウ 一部負担金の徴収誤り及び診療録会計欄の記載誤り例
エ 一部負担金の受領について、受領すべき者から受領していない例
オ 管理簿等の作成がなく未収となっている一部負担金の管理が不十分な例
カ 保険診療分以外の負担額が、保険診療分の診療録第1号(1)の3の負担金徴収額に合算して記載されている例(区別して記載すること。)
キ 一部負担金の受領について、10 円未満の端数処理の誤り例
ク 保険請求できないベニューラ静脈留置針について、患者からの費用を徴収した例
ケ 保険請求が認められないもの(HIV 検査)について、患者からの費用を徴収した例
A保険診療に係る一部負担金と保険外診療に係る費用を明確に区別すること。
B患者ごとの一部負担金徴収に係る日計表について、医療保険と介護保険が混在しているので明確に区分すること。
4 領収証・明細書に係る事項
@領収証の様式について、医科診療報酬点数表の各部単位で金額の内訳が分かるものとし、「別紙様式1」を標準とすること。
A領収証を交付するにあたっては、併せて明細書も無償で交付すること。なお、明細書の様式は、「別紙様式5」を標準とすること。
5 保険外負担に係る事項
@保険外負担に係る事項について、次の事例が認められたので改めること。
ア 一部の検査について、患者から自費徴収している例
イ 薬剤料の一部について、患者から自費徴収している例
ウ 保険外負担において、療養の給付と直接関係ないサービスとはいえない費用(包帯代・糸代等)を自費徴収している例
A療養の給付と直接関係のないサービス等の取扱いについて、手技料等に包括されている材料等は徴収できないので改めること。
例:点滴注射の針、サポーター、三角巾
B療養の給付とは直接関係のないサービス等に該当する場合については、徴収するサービスの内容や料金を明示した文書に患者の署名を受けることにより同意を確認のうえで徴収を行うこと。
C差額ベッド代の費用徴収にあたり、患者の署名を受けることにより同意を確認のうえ徴収すること。
D入院患者からの電気代の徴収は行わないこと。
6 その他
@被保険者証、免除証明書、医療受給者証等のコピーを診療録に添付しているが、個人情報保護(プライバシー)の観点から速やかに止めること。
A療養の給付を行う際には、被保険者証の提出を求め、療養の給付を受ける資格を確認すること。
B時間外対応加算2における緊急時の対応体制について、対応者、緊急時の対応体制、連絡先等を記載した文書の配布、診察券への記載等により患者に対し周知すること。
C保険医を始めとする保険医療機関の職員は、健康保険法(診療報酬の算定方法、保険医療機関及び保険医療養担当規則)を始めとする関係法令並びに諸規則等について研鑽し、適正な保険診療、診療報酬の請求に努めること。
D当該医療機関内での医薬品の採用について、後発医薬品の使用促進に積極的に取り組むこと。
20 診断群分類及び傷病名
「最も医療資源を投入した傷病名」(ICD−10 傷病名)の選択について、次の事例が認められたので改めること。
@「最も医療資源を投入した傷病名」(ICD−10 傷病名)の選択が医学的に妥当と認められない例。傷病名の選択に留意し改めること。
ア 実際には「腰部脊柱管狭窄症」であるところ「腰椎椎間板ヘルニア」を選択
イ 実際には「うつ病による拒食症」であるところ「脱水症」を選択
ウ 実際には「壊死性筋膜炎」であるところ「播種性血管内凝固」を選択
エ 実際には「肺気腫」であるところ「ARDS」を選択
A妥当と考えられる診断群分類番号と異なる診断群分類番号で算定している例。原疾患が判明している場合には、原疾患に基づいた診断群分類番号で行うこと。
B包括範囲について、術後疼痛に対して使用したロピオン静注50mg を手術薬剤として出来高で算定している例
C包括評価について、適切なコーディングに関する委員会における適切な診断群分類の決定のための検討が不十分な例。標準的な診断及び治療方針について院内で周知を徹底し、適切なコーディングを行う体制の確保を図ること。
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