個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、東北厚生局の医科の個別指導での指摘事項(診療録の記載内容、紙媒体の記録、電子カルテ)をご説明をします。 指摘事項は、東北厚生局の公表資料「平成27年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項(東北厚生局,平成29年2月)」に基づいています。
東北厚生局の個別指導に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
1 診療録
1 診療録の記載内容
@診療録の記載内容について、次の事例が認められたので改めること。
ア 患者からの聴取事項や診察所見の記載がない例(診療録は保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項を適切に記載すること。)
イ 患者の臨床所見や検査所見の記載がない例(医師は、診療の都度、遅滞なく診療の経過、正確な病名、転帰及びその日付を記載すること。)
ウ 医師の診察(問診、視診、触診、聴診等)所見の記載内容が不十分な例(自家診療含む)(医師法で禁止されている無診察診療と誤解されないよう、診療の都度、遅滞なく必要な事項を記載し、記載の充実を図ること。)
エ 入院患者について、医師による日々の診察内容の記載がない例
オ 診療録の所見欄に医師の記載がなく、衛生材料のみが交付されている例
カ 患者の臨床所見の記載がなく点滴を行っている例(診療の経過を記載すること。)
キ 治療計画を策定・変更した場合、その年月日が不明確な例
ク 外来管理加算を請求していないにもかかわらず、診療録に「外来管理加算×1」の記載がある例(電子カルテの初期設定が、「外来管理加算」を算定するようになっており、自動的な算定となるおそれがある場合には改めること。)
ケ 診療録の所見記載が画一的な例
A診療録の様式について、次の事例が認められたので改めること。
ア 診療録の様式について、様式第1号(1)の1又はこれに準じた様式となっていない例
イ 診療録の様式第1号に傷病名の記載がない例
ウ 診療録の様式第1号(1)の3が作成されていない例
エ 診療録の様式第1号(1)の1及び診療報酬明細書に記載している傷病名について、その傷病を診断した経緯又は根拠を診療録に記載していない例
2 紙媒体の記録
@診療録の記録(紙媒体)について、次の事例が認められたので改めること。
ア 診療録に判読困難な記載がある例(第三者にも判読できるように記載すること。)
イ 診療録に貼り紙を貼付したり、貼付したことにより記載された内容が確認できない例
ウ 診療録について、独自の略称で記載している例
エ 鉛筆書き記載の例(ペンで記載すること。)
オ 診療録の訂正について、塗りつぶしや修正液、修正テープ等を使用している例(訂正前の文章が判読できるよう記載はペンで行い、修正は二本線を用いて行うよう改めること。)
カ 医師以外の者(看護師等)による記載の例(診療録の記載は原則医師が行うこと。やむを得ない場合には、必ず医師自らが記載内容を確認の上、署名または記名押印を行うこと。)
キ 複数の医師が診療に当たる場合に、それぞれの責任の所在を明確にするため、記載の都度、署名又は記名押印が行われていない例
ク 傷病の終了年月日及び転帰の記載がなく、傷病名を抹消している例(誤記、訂正と取られかねないので注意すること。)
ケ 欄外へ記載しているもの及び空白の範囲が広い箇所がある例
コ 診療録の処方欄について、用法の記載がない例(外用薬の場合は、部位、範囲を明記すること)
サ 訪問診療を行ったものに「往診」と記載している例
3 電子カルテ
@電子的に保存している記録について、次の事例が認められたので改めること。
ア 認証番号(ID)の付与が適切に行われていない例(運用管理規程に利用者の責務として定めている、職員自身の認証番号の管理が適切に行われるようID
の付与を行うこと。)
イ 異動、退職した職員のID の管理が適切に行われていない例
ウ システムへのすべての入力操作について、対象情報ごとに入力者の職種等の必要な区分に基づいた権限管理(アクセスコントロール)が定められていない例(権限のある利用者以外による作成、追記、変更を行わないこと。)
エ パスワードの更新期限を適切に設定していない例(パスワードの更新期限は最長でも2ヶ月以内に設定すること。)
オ パスワードが2桁であった例(パスワードは英数字、記号を混在させた8文字以上の文字列が望ましい。)
カ 運用管理規程に定めている、電子保存システムを正しく利用させるための教育と訓練が行われていない例(システム管理者は、利用者である職員に対して教育と研修の機会を与えること。)
キ 離席時のクローズ処理が適切に行われていない例
ク 診療録の記載内容が抹消された場合、抹消日時等が表示されていない例
A電子的に保存している記録について、最新の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.2 版」に準拠した運用をしていないので改めること。
B診療録について紙によるものと医療情報システム(電子カルテ)によるものが混在しているのでどちらか一方に統一すること。
C医療機関として電子媒体を原本として定めているにもかかわらず、記録類を紙媒体のみで保存している。
4 その他の事項
@診療録の様式第1号(1)の2について、保険診療分の診療録と自費診療分の診療録とを区別していない例が認められたので、別冊又は別葉とし区別して整備すること。
A自家診療にかかる診療録記載について、医師の診察所見の記載が乏しい例が認められたので、適切に記載すること。
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