個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、厚生局の医科の個別指導での指摘事項(禁忌投与、適応外投与、併用投与、処方料、処方せん料、調剤技術基本料)をご説明します。 指摘事項は、東北厚生局の公表資料「平成27年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項(東北厚生局,平成29年2月)」に基づいています。
厚生局の個別指導に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
8 投薬
薬剤を使用するにあたっては、その必要性を十分に考慮した上で、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」承認事項を遵守し、禁忌に注意すること。
1 禁忌投与
@次の投薬の例が認められたが、禁忌であるので改めること。
ア 胃潰瘍の傷病名のある患者に対し、セレコックス錠100mg を投与した例
イ うっ血性心不全の傷病名のある患者に対し、アクトスOD 錠15 を投与した例
ウ 慢性肝炎の傷病名のある患者に対して、フェノフィブラートカプセル100mgを投与した例
エ うっ血性心不全の患者へサンリズムカプセル50mg を投与した例
オ 慢性呼吸不全患者へロヒプノール錠1 1mg を投与した例
カ ベルソムラ錠投与中の患者に対する、クラリスロマイシン錠を投与した例
キ うっ血性心不全の患者へリスモダンR 錠150mg を投与した例
ク 急性呼吸不全の患者へマイスリー錠10mg を投与した例
A次の投薬の例が認められたが、禁忌等に留意すること。
ア カロナール錠200 の投与の例
イ セレコックス錠100mg の投与の例
ウ メドグルコ錠250mg の投与の例
エ リスモダンR錠150mg の投与の例
Bセレコックス錠を処方する場合は、禁忌投与に留意し投与する根拠を診療録に記載すること。
Cアグリリンカプセルを投与する場合は、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明し、同意を得てから投与開始することに留意すること。
2 適応外投与
@適応外投与の例が認められたので改めること。
Aレバミピト錠100mg を投与する場合は、適応に留意すること。
Bサムスカ錠を投与する場合は、適応に留意すること。(単剤投与することなく、他の利尿薬と併用)
C処方せん料について、次の適応外投与の例が認められたので改めること。
例:(手)日光角化症に対するベセルナクリーム5%
3 長期漫然投与(適宜効果判定が行われず漫然行われる投薬)
@投与期間の上限が設けられている医薬品について、その上限を超えて投与されている例が認められたので改めること。
例:逆流性食道炎に対するプロトンポンプ阻害剤(ネキシウムカプセル20mg)の上限の8週間を超えた投与。
A次の長期漫然投与の例が認められたので改めること。
ア 逆流性食道炎に係るランソプラゾールカプセル投与の例
イ 逆流性食道炎に係るガスターD 錠投与の例
ウ メチコバール錠投与の例
エ ロキソニン錠60mg の84 日間投与の例
B抗生剤の使用にあたっては、用法、適応症に留意すること。抗生剤の長期投与に留意すること。
例:ミノサイクリン塩酸塩錠100mg
Cステロイド剤の長期投与に留意すること。
4 過剰投与
@次の不必要な多剤投与(同じ適応症に対して、同様の効果のものの併用)の例が認められたので改めること。
例:エンテロノン−R 散とミヤBM 細粒、ラックビー微粒N(1%)の併用
5 併用投与
@消炎鎮痛剤の併用については、副作用に留意すること。
A注射薬を併用で投与する場合は、相互作用に留意すること。
6 処方料
@特定疾患処方管理加算について、特定疾患に対する治療をしていないにもかかわらず算定している例が認められたので改めること。
A長期投薬加算について、特定疾患に対する薬剤が28 日以上処方されていないにもかかわらず算定している例が認められたので改めること。
7 処方せん料
@特定疾患処方管理加算
ア 別に厚生労働大臣が定める疾患を主病とするもの以外の患者に算定しているものが認められたので改めること。
イ 別に厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対し、特定疾患に対する薬剤の処方がない場合に算定しているものが認められたので改めること。
ウ 算定にあたっては、算定要件を十分に確認し厚生労働大臣が定める疾患を主病とするものに限り算定することとし、自動算定となることがないようにすること。
A一般名処方加算の算定においては、診療録に「般」の記載を行うなど一般的名称で処方が行われたことを記録すること。
B適応する傷病名がないにもかかわらず、処方せんを発行している例が認められたので改めること。
例:ロキソニンテープ、ATP 腸溶錠、パントシン散20%
C処方せんに記載する外用薬の塗布部位は、「患部に」「ひどい所に」ではなく、解剖学的部位を記載するように改めること。
D外用薬の用法について、点眼薬では回数を、クリーム・軟膏では塗布部位をそれぞれ詳細に記載するよう改めること。
E退院時の処方は、必要な日数の投与に留めること。
F処方せんについて、後発医薬品への変更が不可の場合の保険医署名欄が自動的に印字される仕様になっているので改めること。
8 調剤技術基本料
@薬剤師が常時勤務する保険医療機関において調剤を行った場合でないにもかかわらず、算定している例が認められたので改めること。
9 処方の不適切な例
@処方について、次の事例が認められたので改めること。
ア チガソンカプセル10 の処方にあたっては、催奇形性があるなどの副作用について患者に説明し、避妊の必要性などを理解させた後、同意を書面で得てから使用すべきであるのに行っていない例
イ 骨粗鬆症に対するボナロン錠35mg、フォサマック錠35mg ならびにリカルボン錠50mg の用法が朝食前となっている例(朝起床時に服用とすること。)
ウ ボルタレンサポ及びペンタサ坐剤の用法が肛門となっている例(直腸内挿入とすること。)
エ アンヒバ坐剤小児用100mg の用法を、「発熱時肛門に挿入すること」としている例(「直腸内挿入」の誤りなので改めること。)
オ ヘルペスに対するカサールクリーム3%の用法が誤っている例(7日間使用し、改善の兆しがみられないか、悪化する場合には他の治療に切り替えること。)
Aエクア錠50mg を投与する場合は、使用上の注意(慎重投与)に留意すること。
Bメマリー錠5mg を投与する場合は、用法に留意すること。
Cロキソニンテープを処方する場合は、処方内容、部位、用法を診療録に記載すること。
D診療録及び診療報酬明細書に当該ビタミンの投与が必要かつ有効と判断した趣旨を具体的に記載されていないにもかかわらず、ビタミン剤に係る薬剤料を算定している例が認められたので改めること。
例:シーピー配合顆粒、アリナミンF 糖衣錠25mg、アリナミンF 糖衣錠5mg
10 その他
@患者の不注意により紛失し、再交付した薬剤に係る費用について保険請求を行っている例が認められたので改めること。
A薬剤の投与について、経口投与が可能な場合は、経口投与を優先させること。なお、保険医療機関及び保険医療養担当規則第20 条第4号を遵守すること。
例:ノイロトロピン注射液
B使用薬剤については、医学的に妥当・適切な範囲で行い、年齢・症状により適宜増減するなど用法・用量に留意すること。
C投薬について、診療上の必要性を十分考慮した上で、個々の患者の状況に応じて、必要最小限の実施に努めること。
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