個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、厚生局の医科の個別指導での指摘事項(検体検査実施料、検体検査判断料、生体検査料、エックス線診断料、核医学診断料)をご説明します。 指摘事項は、東北厚生局の公表資料「平成27年度に実施した個別指導において保険医療機関(医科)に改善を求めた主な指摘事項(東北厚生局,平成29年2月)」に基づいています。
個別指導に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
6 検査料
1 検体検査実施料
@検体検査実施料について、次の事例が認められたので改めること。
ア 尿・糞便等検査
・ 尿沈渣(鏡検法)について、委託契約等に基づき保険医療機関外で実施された検査の結果報告を受けるのみの場合に算定している例
イ 血液学的検査
・ 「末梢血液像(自動機械法)」で算定すべき例を「末梢血液像(鏡検法)」で算定している例
ウ 生化学的検査(T)
・ シスタチンC を腎機能低下が疑われない患者に対して算定している例
エ 生化学的検査(U)
・ 内分秘学的検査について、慢性維持透析外来医学管理料の所定点数に含まれるPTH 検査を別に算定している例
・ 前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺癌を強く疑われる者に対して検査を行った場合に、前立腺癌の診断の確定又は転帰の決定までの間に原則として、1回を限度として算定するものである。ただし、腫瘍マーカー(前立腺特異抗原(PSA))について、初回の算定結果が4.0ng/mL
以上で前立腺癌の確定診断がつかない場合に、3月に1回に限り、3回を上限として算定できるものであるが、当該算定要件を満たしていない場合(初回の測定結果が正常値)に算定している例
・ 前立腺特異抗原(PSA)を2回以上算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に当該検査の実施月日、検査値をすべて記載することになっているが、それぞれ記載されていない例
オ 免疫学的検査
・ 免疫血液学的検査(ABO 血液型、Rh(D)血液型)について、眼科の術前検査としては不要であるにもかかわらず行っていた例
カ 微生物学的検査
・ 術前検査における細菌培養同定検査について、画一的に行われていた例(患者個々の状態に応じて必要な検査項目を選択すること。)
・ 入院時における細菌培養同定検査について、画一的に行われていた例(患者個々の状態に応じて必要な検査項目を選択すること。)
A検体検査実施料の加算
ア 外来迅速検体検査加算の算定にあたり、検査実施日のうちに結果を説明及び文書により提供し、結果に基づく診療が行われた場合に算定すること。
2 検体検査判断料
@検体検査判断料(血液学的検査判断料、生化学的検査(T)判断料、免疫学的検査判断料)について、診療録に検査結果の評価記載がないものが認められたので改めること。
3 生体検査料
@生体検査料について、次の事例が認められたので改めること。
ア 呼吸循環機能検査等
・ 終夜睡眠ポリグラフィー(携帯用装置)、肺気量分画、フローボリューム、鼻腔通気度を、初診時などに画一的に実施している例(必要性を考慮して実施すること。)
・ 心電図検査について、診療録に検査結果の評価記載がない又は乏しい例
イ 超音波検査等
・ 検査の実施者を記録していない例
・ 超音波検査(断層撮影法)の算定にあたり、血管の血流診断を行っていないにもかかわらず、パルスドプラ法による加算を算定している例
ウ 監視装置による諸検査
・ 呼吸心拍監視、カルジオスコープについて、観察した呼吸曲線、心電曲線、心拍数それぞれの観察結果要点の診療録への記載がない又は不十分な例
・ 分娩監視装置による諸検査について、算定根拠が明確になるよう診療録等に記載していない例
・ 経皮的動脈血酸素飽和度測定について、対象となる患者以外に算定している例(対象となる患者等の算定要件に留意すること。)
エ 脳波検査等
・ 終夜睡眠ポリグラフィーの算定について、検査結果の要点の診療録への記載が不十分な例
オ 神経・筋検査
・ 神経学的検査の算定にあたり、成人においては「別紙様式19」の神経学的検査チャート、小児においては「別紙様式19 の2」の神経学的検査チャートを使用していない例(検査ができなかった項目についてはその理由を記載すること。)
カ 眼科学的検査
・ 眼科学的検査(精密眼底検査、矯正視力検査、精密眼圧測定、角膜曲率半径計測、細隙燈顕微鏡検査(前眼部))について、診療録に検査結果の記載が乏しい又はない例
・ 光学的眼軸長測定について、接触型A モード法による場合は、超音波検査(A モード法)により算定することとなるが、当該測定と当該検査を重複して請求している例
キ 臨床心理・神経心理検査
・ 認知機能検査その他の心理検査について、診療録に検査結果の評価記載が乏しい例(記載を充実し、今後の診療に反映すること。)
・ 発達及び知能検査で算定すべきところを認知機能検査その他の心理検査で算定している例(算定要件を十分に確認の上算定すること。)
ク 内視鏡検査
・ 喉頭ファイバースコピーについて、診療録への所見の記載がない例(検査の都度記載すること。)
・ 生体検査(胃・十二指腸ファイバースコピー)を行うにあたり、患者に対し検査内容の説明、同意の確認が不十分な例
4 診断穿刺・検体採取料
@血液採取(静脈)について、特定薬剤治療管理料(採血の費用は含まれる。)を算定している患者に算定しているものが認められたので改めること。
A組織試験採取、切採法(皮膚)について、患者の承諾を得た旨を診療録に記載するよう努めること。
5 その他
@検査について、診療録に検査結果の評価記載が乏しいものが認められたので、記載を充実し、今後の診療に反映すること。
A検査は、診療上の必要性を十分考慮した上で、個々の患者の状況に応じて必要な項目を選択し、段階を踏んで必要最小限の回数で実施すること。(保険医療機関及び保険医療養担当規則第20
条「診療の具体的方針」参照)
B複数の疑い病名のもとに複数の検査をほぼ定期的に実施している例が散見されたが、検査結果が診療に反映されない検査については、健康診断的であるとみなされ、保険診療として認められないので改めること。
C入院患者について、根拠となる症状等の診療録への記載が乏しく検査を行っている例や検査結果が診療録に記載されていない例が多く認められたので改めること。
7 画像診断
1 エックス線診断料
@診断結果の診療録への評価記載が乏しいものが認められたので改めること。
A他の医療機関で撮影したフィルム等に係る写真診断について、診断所見の診療録記載のない例が認められたので改めること。
B画像診断管理加算1の算定にあたり、専ら担当する医師が読影していないものが認められたので改めること。
2 核医学診断料
@乳房撮影について、その結果を判断した者の責任の所在を明確にすること。
3 コンピューター断層撮影診断料
@コンピューター断層撮影(CT 撮影)について、所見及び検査結果の評価を具体的に診療録に記載し診療に反映させること。
A必要性が乏しく不適切に算定されたコンピューター断層撮影(CT 撮影)が認められたので改めること。
Bコンピューター断層撮影(CT 撮影)及び磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)の実施にあたり、診療録へ必要性及び撮影後の診断所見記載に努めること。
4 その他
@ 画像診断の実施にあたり、診療上の必要性を十分考慮したうえで、必要最小限の実施に努めること。
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