個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、診療に関する近畿厚生局の医科の個別指導での、診療録、傷病名、基本診療料などの指摘事項をご説明します。 指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成29年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。
厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
1 目次
T 診療に係る事項
1 診療録等
2 傷病名
3 基本診療料等
4 医学管理等
5 在宅医療
6 検査
7 画像診断
8 投薬・注射
9 リハビリテーション
10 精神科専門療法
11 処置
12 手術
13 麻酔
14 病理診断
15 特定保険医療材料等
2 診療に係る事項
1 診療録等
(1)診療録への必要事項の記載について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 医師による日々の診療内容の記載が全くない、又は極めて乏しい。
ア 医師法で禁止している無診察治療とも誤解されかねないので直ちに改めること。
イ 診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項の記載を十分に行うこと。特に、症状、所見、治療計画等について記載内容の充実を図ること。
ウ 初診時において、診療録に患者から聴取した既往歴・現病歴・アレルギー歴についての記載をより充実すること。
A 様式第1号(1)の1及び診療報酬明細書に記載している傷病名について、その傷病を診断した経緯又は根拠の記載がない、又は乏しい。
B 様式第1号(1)の3に患者から徴収する一部負担金の徴収金額が適正に記載されていない。
C 「傷病名欄」への記載は、1行に1傷病名を記載すること。
(2)紙媒体の記録について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 複数の保険医が一人の患者の診療に当たっている場合において、署名又は記名押印が診療の都度ないため、診療の責任の所在が明らかでない。
A 記載内容の判読が困難である。
B 鉛筆で記載している。診療録の記載はインク又はボールペンを用いて行うこと。
C 消せるボールペンで記載している。診療録の記載は消せないインク又はボールペンを用いて行うこと。
D 修正液・塗りつぶし・貼紙により訂正しているため修正前の記載内容が判別できない。修正は、二重線により行うこと。
E 診療内容について、医師以外の者が代行して記載しているにもかかわらず、医師が最終的に内容を確認した上で、署名又は記名押印を行っていない。
F 診療録の記載をせず、メモが記載された付箋を貼付している。
(3)電子的に保存している記録について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 最新の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」に準拠していない。
ア 真正性
・パスワードの有効期限を適切に設定していない。
パスワードは定期的に(2ヶ月以内)に変更すること。
・一つのID、パスワードを複数の利用者が使用している。
・修正履歴が表示されない。
・代行操作の承認の仕組みがない。
・パスワードが1文字である例が認められた。パスワードは英数字、記号を混在させた8文字以上の文字列が望ましい。
イ 管理体制、その他
・最新版の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」に準拠するよう運用管理規程の更新を行う等、より適切な運用に努めること。
・運用管理規程が整備されていない。
(4)診療録について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
@ 保険診療の診療録と保険外診療(自由診療、予防接種、健康診断)の診療録を区別して管理していない。
A 医師が自分自身の診療録に自ら記載(自己診療)している。医師は必ず、別の医師の診療に基づいて検査・投薬・注射等を受けること。
B 自家診療について、診療録の記載内容の充実を図ること。
(5)診療録の様式が、定められた様式(第1号(1))に準じていないので改めること。
@ 労務不能に関する意見欄がない。
A 業務災害等に関する欄がない。
B 様式第1号(1)の3を作成していない。
2 傷病名
(1)傷病名の記載又は入力について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 傷病名の開始日、終了日、転帰の記載がない。
A 実際の診療開始日と診療報酬明細書上の診療開始日が異なる。
B 事務担当者が傷病名を記載している。傷病名は、必ず医師が記載すること。
C 診療録に記載する傷病名は簡略化せず適切に記載をすること。
D 診療報酬明細書に記載している傷病名の一部について、診療録に記載していない。
(2)傷病名の内容について、次の不適切な例が認められたので改めること。傷病名は診療録への必要記載事項であるので、正確に記載すること。
@ 医学的な診断根拠がない又は乏しい傷病名
A 医学的に妥当とは考えられない傷病名
B 疑うに足りる確実な医学的根拠に基づかずに、「疑い」の傷病名として記載しているもの
C 実際には「疑い」の傷病名であるにもかかわらず、確定傷病名として記載しているもの
D 実際には確定傷病名であるにもかかわらず、「疑い」の傷病名として記載しているもの
E 詳細な記載(急性・慢性、左右の別、部位)がない傷病名
F 単なる状態や傷病名ではない事項を傷病名欄に記載している。傷病名以外で診療報酬明細書に記載する必要のある事項については、摘要欄に記載するか、別に症状詳記を作成すること。
G 主傷病が明確となっていない。主傷病については原則1つとし、複数ある場合は「(主)」などと主傷病が判別できるように記載すること。
H 主傷病は、当該保険医療機関における診療の中心となっている疾患であることに留意して判断されたい。
(3)検査、投薬等の査定を防ぐ目的で付けられた医学的な診断根拠のない傷病名(いわゆるレセプト病名)が認められた。
レセプト病名を付けて保険請求することは、不適切なので改めること。
診療報酬明細書の請求内容を説明する上で傷病名のみでは不十分と考えられる場合には、別に症状詳記(病状説明)を作成し診療報酬明細書に添付すること。
@ 検査に基づかず、医学的根拠が乏しいにもかかわらず付与した「ビタミン欠乏症」
(4)傷病名を適切に整理していない例が認められた。 傷病名には正しい転帰を付して、適宜整理すること。
@ 整理されていないために傷病名数が多数となっている。
A 長期にわたる「疑い」の傷病名
B 長期にわたる急性疾患等の傷病名
C 重複して付与している傷病名
D 診療報酬明細書において、傷病名が転帰の記載なく消失している例
E 傷病名の転帰について、治癒とするべきところ中止としている。
F 疑い病名について、検査の結果、異常値がないにもかかわらず、転帰が付されていない。
(5)傷病名については、原則として、厚生労働省通知「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項及び方式並びに光ディスク等を用いた費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項、方式及び規格について」(平成28年4月28日付保発0428第14号)別添3に規定する傷病名を用いること。
3 基本診療料等
(1)初・再診料について
@ 初・再診料
ア 患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為でないにもかかわらず初診料を算定している。
イ 自他覚症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始したにもかかわらず、初診料を算定している。
ウ 現に診療中の患者に対して新たな傷病の診断を行った際に、初診料を算定している。
エ 慢性疾患等、明らかに以前受診した疾病又は負傷等と同一の疾病又は負傷等であると推定される場合の診療について、初診料を算定している。
オ 初診又は再診に附随する一連の行為で来院したものについて再診料を算定している。
カ 電話による再診について、検査結果のみを患者に報告した場合に算定している。
キ 同一日に他の傷病について、患者の意思に基づき、別の診療科を再診として受診した場合において、3つ目の診療科について再診料の注3に掲げる所定点数を算定している。
ク 同一日の再診について、再診に係る根拠の診療録への記載を充実させること。
ケ 電話等を通した再診に係る再診料の算定においては、患者又はその看護にあたっている者からの医学的な意見の求めに対し、治療上必要な適切な指示を行うこと。
コ 再診料について、訪問診療を行った後、単に家族に対し処方せんを発行した場合に算定している。
サ 訪問診療を行った後に、家族等が単に薬剤を取りに医療機関に来た場合に再診料を算定している。
シ 初・再診料について、特別養護老人ホームの配置医師が入所者に対して特別の必要があって行う診療でないにもかかわらず算定している。
A 夜間・早朝等加算
ア 診療録等に受付時間を記録するなどにより算定要件を満たしていることを明確にされたい。
イ 施設基準に適合していない。
・1週間当たりの表示診療時間の合計が 30 時間以上となっていない。
B 外来管理加算
ア 患者からの聴取事項や診察所見の要点の診療録への記載がない又は記載が乏しい。
イ 医師が丁寧な問診と詳細な身体診察を行い、それらの結果を踏まえて患者に対して症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消する取組みを行うこと。
ウ 処置を行っているにもかかわらず、処置料を算定せず、外来管理加算を算定している。
エ やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤投与した場合に算定している。
オ 電話再診を行った場合に算定している。
C 地域包括診療加算
ア 初回算定時に患者の署名付きの同意書を作成していない。
イ 他の保険医療機関と連携の上、患者が受診している全ての医療機関を把握し、処方されている医薬品全てを管理している内容について、診療録に記載がない。
ウ 健康診断や検診の受診勧奨を行い、その結果等を診療録に記載していない。
(2)入院料について
@ 入院診療計画
ア 説明に用いた文書について、参考様式で示している以下の項目についての記載がない。
・特別な栄養管理の必要性
イ 説明に用いた文書について、記載内容が不適切である。
・記載内容が画一的であり、個々の患者の病状に応じたものとなっていない。
ウ 関係職種が共同して策定していない。
A 栄養管理体制
ア 栄養管理計画書に必要事項(栄養状態の評価)の記載が乏しい。
(3)入院基本料について
@ 療養病棟入院基本料
ア 定期的な患者の状態の評価及び入院療養の計画の見直しの要点について診療録への記載が乏しい。
イ 医療区分に係る評価が不適切である。
ウ 救急・在宅等支援病床初期加算について、診療録に記載すべき内容(自院の入院歴の有無)の記載が不十分である。
エ 救急・在宅等支援病床初期加算について、介護老人保健施設等又は自宅で療養を継続していた患者が、軽微な発熱や下痢等の症状をきたしたために入院医療を要する状態となった場合ではないにもかかわらず算定している。
(4)入院基本料等加算について
@ 救急医療管理加算2
ア 加算対象の状態ではない患者に対して算定している。
A 病棟薬剤業務実施加算
ア 必要な患者に対して、服薬計画を書面で医師等に提案していない。また、その書面の写しを診療録に添付していない。
(5)特定入院料について
@ 回復期リハビリテーション病棟入院料
ア 入院時等に行った日常生活機能評価の測定結果について、診療録への記載が乏し い。
4 医学管理等
(1)特定疾患療養管理料について
@ 管理内容の要点を診療録に記載していない、要点の記載が乏しい又は画一的である。
A 厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理が行われていない。
B 厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする者に対し、実際に主病を中心とした療養上必要な管理が行われていない場合又は実態的に主病に対する治療が行われていない場合は算定できないので留意すること。
なお、主病とは、当該患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患をいうものであること。
C 厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者以外の患者に対して算定している。
D 再診が電話等により行われた場合に、誤って算定している。
E 訪問診療を行った後に、家族等が単に薬剤を取りに医療機関に来た場合に算定している。
(2)特定疾患治療管理料について
@ 特定薬剤治療管理料
ア 薬剤の血中濃度及び治療計画の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 血中濃度を測定していないにもかかわらず、誤って算定している。
ウ 初回月加算について、血中濃度を頻回に測定していないにもかかわらず算定している。
エ 対象患者(ジキタリス製剤又は抗てんかん剤を投与している患者、免疫抑制剤を投与している臓器移植後の患者、その他厚生労働大臣が定める患者)以外の患者に対して算定している。
A 悪性腫瘍特異物質治療管理料
ア 腫瘍マーカー検査の結果及び治療計画の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 悪性腫瘍であると既に確定診断した患者以外の者に対して算定している。
ウ 多項目の腫瘍マーカー検査を行うことが予想される初回月ではないにもかかわらず、初回月加算を算定している。
B てんかん指導料
ア 診療計画及び診療内容の要点の診療録への記載が乏しい。
C 難病外来指導管理料
ア 診療計画及び診療内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 実態的に主病である難病に対する治療が行われていない場合に誤って算定している。
D 皮膚科特定疾患指導管理料
ア 診療計画及び指導内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい(画一的である)。
イ 皮膚科又は皮膚泌尿器科と他の標榜する診療科を併せ担当している医師が当該医学管理を行い、療養上の指導を行った場合に誤って算定している。
E 外来・集団栄養食事指導料
ア 外来栄養食事指導について、医師が管理栄養士に対して指示した事項を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 初回の外来栄養食事指導について、療養のため必要な栄養の指導を概ね30 分以上行っていない場合に算定している。
ウ 外来栄養食事指導又は集団栄養食事指導について、栄養指導記録に記載された指導時間が画一的である。
F 在宅療養指導料
ア 診療録に保健師又は看護師への指示事項を記載していない。
イ 指導の要点及び指導実施時間を療養指導記録に記載していない。
G 慢性維持透析患者外来医学管理料
ア 特定の検査結果及び計画的な治療管理の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
H 喘息治療管理料
ア ピークフローメーターを用いた計画的な治療管理を行っていない場合に算定している。
I 慢性疼痛疾患管理料
ア マッサージ又は器具等による療法を行っていないにもかかわらず、算定している。
J 糖尿病合併症管理料
ア 糖尿病足病変ハイリスク要因に関する評価結果について、診療録又は療養指導記録への記載が乏しい。
(3)生活習慣病管理料について
@ 療養計画書を作成していない。
(4)介護支援連携指導料について
@ ケアプランの写しを診療録に添付していない。
(5)退院時リハビリテーション指導料について
@ 指導又は指示内容の要点を診療録に記載していない。
(6)薬剤総合評価調整管理料について
@ 内服を開始して4週間以上経過した内服薬が6種類以上処方されていない患者について、算定している。
(7)診療情報提供料(T)について
@ 診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認めこれに対し患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定できるものであること。
A 紹介元医療機関への受診行動を伴わない患者紹介の返事について算定している。
B 紹介先の機関ごとに所定の様式又はこれに準じた様式の文書に必要事項を記載すること。
C 交付した文書の写しを診療録に添付していない。
D 注7の加算について、退院患者の紹介に当たり添付した検査結果、画像情報及び治療計画等の写し又はその内容を診療録に貼付又は記載していない。
E 同一紹介先医療機関に対する、同月2回目の提供について算定している。
F 保険薬局への診療情報提供において、処方せんの写しが診療録に添付されていない。
G 特別養護老人ホーム等告示・通知で定められた紹介先以外の機関に対し、診療情報を提供した場合に算定している。
H 他の医療機関からの患者に関する問い合わせに対する回答について算定している。
I 入院中の患者が他医療機関に受診する際に、当該診療に必要な診療情報を文書により提供した場合に算定している。
J 診療録に記載していない傷病名を紹介文書に記載している例が認められたので改めること。
K 特別の関係にある機関に情報提供が行われた場合に算定している。
(8)診療情報提供料(U)について
@ セカンド・オピニオンではないものを誤って算定している。
(9)薬剤情報提供料について
@ 薬剤情報を提供した旨を診療録に記載していない。
A 薬剤情報の患者提供文書への記載が不十分である。
(10)療養費同意書交付料について
@ 医師が療養の給付を行うことが困難であると認めた患者に対して算定するものであるところ、当該負傷や疾患等につき、自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに施術業者の施術を受けさせることに同意を与えている。
A 医師が療養の給付を行うことが困難であると認めた医学的根拠について診療録に記載がない。
(11)退院時薬剤情報管理指導料について
@ 薬剤情報を提供した旨及び提供した情報並びに指導した内容の要点の診療録(薬剤管理指導料を算定している場合は、薬剤管理指導記録で可)への記載が乏しい。
5 在宅医療
(1)在宅患者診療・指導料について
@ 往診料
ア 患家の求めに応じて患家に赴いたことが不明である。
イ 診療録に患家の求めの内容や患家からの連絡の態様、患家の求めのあった時刻等を診療録に記載する等の方法により、算定根拠を明確にされたい。
ウ 定期的ないし計画的に患家に赴き診療を行った場合に算定している。
エ 介護老人保健施設であって、その形態から当該ホーム全体を同一の看家とみなすことが適当であるものにおいて、2人以上の患者に対して診療した場合に、2人目以降の患者について算定している。
オ 緊急往診加算について、標榜時間外の往診に対して算定している。
カ 緊急往診加算について、速やかに往診をしなければならないと判断した根拠が不明である。
キ 深夜往診加算について、深夜でない時刻の往診に対して算定している。
A 在宅患者訪問診療料
ア 在宅での療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者に対して定期的に訪問して診療を行った場合に算定できるものであること。
イ 当該患者又はその患者等の署名付きの訪問診療に係る同意書を作成していない、又は診療録に添付していない。
ウ 訪問診療の計画及び診療内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
エ 訪問診療を行った日における当該医師の当該在宅患者に対する診療時間(開始時刻及び終了時刻)及び診療場所について診療録に記載していない。
オ 同居する同一世帯の複数の患者に対し診察をしているにもかかわらず、2人目以降の患者に当該診療料を算定している。
B 在宅時医学総合管理料
ア 在宅療養計画及び説明の要点等の診療録への記載がない又は乏しい。
イ 同一月内において院外処方せんを交付しない訪問診療のみ実施した場合について、処方せんを交付した場合の点数を算定している。
ウ 「単一建物居住者が2人以上9人以下の場合」であるにもかかわらず、誤って「単一建物居住者が1人の場合」で算定している。
エ 「月1回訪問診療を行っている場合」であるにもかかわらず、誤って「月2回以上訪問診療を行っている場合」で算定している。
C 在宅患者訪問看護・指導料
ア 医師が保健師、助産師、看護師又は准看護師に対して行った指示内容を、診療録に記載していない。
イ 保健師、助産師、看護師又は准看護師が行った、患者の体温、血圧等基本的な病態を含む患者の状態並びに行った指導及び看護の内容の要点を記録していない。
ウ 要介護被保険者等である患者について、末期の悪性腫瘍等の患者又は急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要である患者ではないにもかかわらず、算定している。
D 在宅寝たきり患者処置指導管理料
ア 患者自ら又はその家族等患者の看護に当たる者が処置を実施していない。
E 訪問看護指示料及び特別訪問看護指示加算
ア 訪問看護指示書等の写しを診療録に添付していない。
イ 1か月を超える期間の指定訪問看護を指示した場合に、訪問看護指示書を交付していない月において誤って算定している。
ウ 医師が保健師、助産師、看護師又は准看護師に対して行った指示内容について、診療録への記載が乏しい。
F 在宅患者緊急時等カンファレンス料
ア カンファレンスに参加した医療関係職種等の氏名、カンファレンスの要点、患者に行った指導の要点及びカンファレンスを行った日についての診療録への記載がない。
(2)在宅療養指導管理料について
@ 次の在宅療養指導管理料について、当該在宅療養を指示した根拠、指示事項及び指導内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
ア 在宅自己注射指導管理料
イ 在宅酸素療法指導管理料
ウ 在宅中心静脈栄養法指導管理料
エ 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料
オ 在宅自己導尿指導管理料
カ 在宅人工呼吸指導管理料
キ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料
A 介護老人保健施設の入所者に対して行った診療において、在宅酸素療法指導管理料を算定している。
(3)在宅療養指導管理材料加算について
@ 血糖自己測定器加算
ア 自己測定の記録に基づいた指導を実施していない患者に対して算定している。
イ 血糖自己測定の回数の根拠が明確ではない。
ウ 血糖自己測定器加算を算定した場合において、診療報酬明細書の「摘要」欄に実際に測定した回数を記載していない。
(4)在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料について
@ 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料の算定において、理学療法士等の指導に要した時間の記録が不十分である。
6 検査
(1)検査は、患者個々の症状・所見に応じて検査の項目を選択し、段階を踏み、セット検査を漫然と反復することなく、適切に行うこと。
(2)検査項目、回数は治療方針に的確に反映させる範囲でなければならない。
また、検査結果を適宜評価し、診療録にその要点を記載して治療に反映すること。
(3)検査について、次の不適切な実施例が認められたので改めること。
@ 医学的に必要性が乏しい検査
ア 段階を踏んでいない検査
イ 重複と見なされる検査
ウ 必要以上に実施回数の多い検査
A 健康診断として実施した検査
(4)その他不適切に実施した検査
@ 尿沈渣(鏡検法)
ア 尿中一般物質定性半定量検査もしくは尿中特殊物質定性定量検査において異常所見が認められた場合、又は診察の結果から実施の必要があると考えられる場合ではないにもかかわらず、実施している。
A 糞便検査
ア 糞便中ヘモグロビンについて、検査の実施に至らなかったにもかかわらず、検査容器を患者に渡したことにより誤って算定している。
B 腫瘍マーカー
ア 診察及び他の検査・画像診断等の結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者以外の者に対して実施している。
イ 悪性腫瘍の診断が確定した患者について、悪性腫瘍特異物質治療管理料ではなく、腫瘍マーカー検査を算定している。
ウ 検査を行う必要性の診療録への記載が不十分である。
C 細菌薬剤感受性検査
ア 実施回数を誤って算定している。
D 呼吸心拍監視
ア 診療録に観察した呼吸曲線、心電曲線、心拍数の観察結果の要点の記載がない。
E 経皮的動脈血酸素飽和度測定
ア 呼吸不全若しくは循環不全又は術後の患者であって、酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を現に行っているもの又は酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を行う必要があるものに行った場合及び静脈麻酔、硬膜外麻酔又は脊椎麻酔を実施中の患者に行った場合に算定できるものであること。
F 屈折検査「2 1以外の場合」
ア 矯正視力検査と併施した場合は、屈折異常の疑いがあるとして初めて検査を行った場合又は眼鏡処方せんを交付した場合に限り併せて算定すること。
G コンタクトレンズ検査料
ア コンタクトレンズ装用を目的に受診した患者(既装用者の場合を含む。)に対して眼科学的検査を行った場合は、コンタクトレンズ検査料を算定すること。
イ 新たな疾患の発生(屈折異常以外の疾患の急性増悪を含む)等により、コンタクトレンズの装用を中止し、コンタクトレンズ検査料以外の眼科学的検査を算定する場合は、診療録にコンタクトレンズの装用を中止したことを記載することにより算定の根拠を明確にすること。
H 認知機能検査その他の心理検査(操作が容易なもの)
ア 対象外の検査を実施した場合に誤って算定している(例 MMSE)。
I 血液採取
ア 糖試験紙法にかかる血液採取についてD400血液採取の「2 その他」で算定すべきところ、「1 静脈」で算定している。
J その他
ア 外来迅速検体検査加算について、別に厚生労働大臣が定める検体検査の結果を検査実施日のうちに説明した上で文書により情報提供し、当該検査の結果に基づく診療が行われた場合に算定すること。
7 画像診断
(1)画像診断について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 医学的に必要性が乏しい画像診断 ア コンピューター断層撮影
A 診療録に診断内容の記載がない、又は乏しい。
(2)画像診断管理加算1
@ 他の保険医療機関から画像診断の判読も含めて依頼を受け、その結果を文書により回答したものについて算定している。当該加算は、専ら画像診断を担当する医師の属する保険医療機関において当該患者の診療を担当する医師に報告した場合に算定するものであること。
A 読影及び診断結果の報告文書に地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当する常勤の医師名の記載がなく、当該常勤の医師が診療を担当する医師に報告したことが不明確である。
8 投薬・注射
(1)次の禁忌投与の例が認められたので改めること。
@ 消化性潰瘍のある患者に対するロキソプロフェンナトリウム錠の投与
(2)次の適応外投与の例が認められたので改めること。
@ 抗生物質を投与していない患者に対する耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR錠)の投与
(3)次の用法外投与の例が認められたので改めること。
@ ネブライザーを用いて投与しているバニマイシン注射液 100 r 13
(4)次の長期漫然投与の例が認められたので改めること。
@ 維持療法の必要な難治性逆流性食道炎に対するプロトンポンプ・インヒビターの長期処方にあたって、定期的な評価、内視鏡検査等を実施していない。
(5)薬剤の投与について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 食事摂取可能な患者にビタミン製剤を投与しているものについて、必要かつ有効と判断した趣旨を診療録及び診療報酬明細書に記載していない。なお、ビタミン剤が算定できるのは、医師が当該ビタミン剤の投与が有効であると判断し、適正に投与された場合等に限られるものであり、原則として食事から必要なビタミンを摂取できる場合には算定できないことに留意すること。
A 適応・用法・用量等の医薬品医療機器等法(旧薬事法)承認事項を遵守し、同一薬効の薬剤の重複投与、経口投与と静脈内投与の重複は避けられたい。また、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう注意すること。
(6)投薬・注射について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@ 2以上の診療科で異なる医師が処方した場合以外の場合に調剤料及び処方料を誤って複数回算定している。
A 処方せんを、患者又は現にその看護にあたっている者に対して交付していない。
B 一般名処方加算について、一般的名称で処方が行われたことの何らかの記録が診療録に残されていない。
C 調剤技術基本料について、薬剤師が常時勤務していないにもかかわらず算定している。
D 注射実施料
ア 精密持続点滴注射加算について、1時間に30mL より速い速度で注入しているものについて算定している。
イ 同一日に点滴注射と造影剤使用撮影を実施した場合について、注射手技料を造影剤使用加算と別に算定している。
ウ 中心静脈注射用カテーテル挿入の算定において、所定点数に含まれる画像診断の費用を別に算定している。
E 経口投与が可能であるものについて、注射により薬剤を投与している。
(7)特定疾患処方管理加算について
@ 算定対象の疾患が主病でない患者について算定している。
(8)長期投薬加算について
@ 算定対象の疾患が主病でない患者について算定している。
A 算定対象となる主病に係る薬剤の処方が28日未満であるにもかかわらず算定している。
B 算定対象となる主病以外の疾患に係る薬剤を28日以上処方して算定している。
(9)その他
@ 後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならないこと。
9 リハビリテーション
(1)疾患別リハビリテーションについて
@ リハビリテーション実施計画
ア 開始時及び3か月毎に患者に対して実施計画を説明していない。
イ 開始時及び3か月毎の実施計画の説明の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
A 訓練の記録
ア 訓練の開始時刻及び終了時刻の記載が画一的である。
イ 訓練内容の要点等について、診療録等への記載が乏しい。
B その他
ア 標準的算定日数を超えて継続してリハビリテーションを行う患者について、算定単位数上限を超過して誤って算定している。
イ 標準的算定日数を超えて継続して疾患別リハビリテーションを行う患者(注4に規定する場合)が要介護被保険者等であるにもかかわらず、注1に規定する点数を算定している。
ウ リハビリテーションの起算日が医学的に妥当ではない。
(2)リハビリテーション総合計画評価料について
@ リハビリテーション総合実施計画書において、「1ヵ月後の目標」及び「リハビリテーションの治療方針」を記載していない。
(3)目標設定等支援・管理料について
@ 目標設定等支援・管理シートに基づく医師の患者等への説明内容等について、診療録への記載が乏しい。
A 医師が患者等に説明した内容、当該説明を患者がどのように受け止め、どのように反応したかについて診療録に記載していない。
10 精神科専門療法
(1)入院精神療法について、診療録に当該療法の要点を記載していない、又は記載が乏しい。
(2)通院・在宅精神療法について、診療録への当該診療に要した時間の記載が不適切である。
(3)通院・在宅精神療法について、診療録への診療の要点の記載が乏しい。
(4)心身医学療法について、診療録に当該療法の要点の記載が乏しい。
(5)入院集団精神療法について、次の算定要件を満たしていない例が認められたので改めること。
@ 当該療法の要点を診療録に記載していない。
A 15名を超える患者に対して実施している。
(6)通院集団精神療法について、診療録への診療の要点の記載が乏しい。
(7)入院生活技能訓練法について、次の算定要件を満たしていない又は不適切な例が認められたので改めること。
@ 診療録への要点の記載がない。
A 実施時間に係る記載が画一的である。
(8)精神科退院指導料について、患者又はその家族等に交付した説明文書の写しを診療録に貼付していない。
(9)抗精神病特定薬剤治療指導管理料について、治療計画及び指導内容の要点について診療録への記載がない。
11 処置
(1)診療録への所見等の記載が乏しい。
(2)創傷処置及び消炎鎮痛等処置について、診療録への処置内容の記載が乏しい。
(3)人工腎臓を行った時間の診療録等への記載が画一的である。
(4)人工腎臓について、著しく人工腎臓が困難な障害者等に該当しない患者に対して障害者等加算を算定している。
(5)経管栄養カテーテル交換法について、交換後の確認を画像診断又は内視鏡等を用いて行っていない。
(6)皮膚科軟膏処置について、次の算定要件を満たしていない又は不適切な例が認められたので改めること。
@ 100平方センチメートル未満のものについて算定している。
A 処置範囲を診療録に記載していない、又は記載が乏しい。
B 実際に処置した範囲と異なる範囲の区分(100平方センチメートル以上500平方セ ンチメートル未満)で誤って算定している。
(7)消炎鎮痛等処置について、診療内容が診療録に記載されていないなど当該処置を行ったことが確認できない。
12 手術
(1)手術について
@ 手術内容の診療録への記載が乏しい。
A 同一手術野につき、2以上の手術を同時に行った場合の費用の算定は、主たる手術の所定点数のみにより算定すること。
(2)輸血料について
@ 輸血に伴う血液型検査の費用について、血液型が既知の患者に対して算定している。
13 麻酔
(1)麻酔管理料について、麻酔前後の診察及び麻酔の内容を診療録に記載していない。
14 病理診断
(1)診療録に病理学的検査の結果に基づく病理判断の要点の記載がない。
15 特定保健医療材料等
(1)本来の使用目的とは異なった目的で使用した特定保険医療材料を算定している例が認められたので改めること。
@ 膀胱瘻に使用した交換用胃瘻カテーテル(胃留置型・バルーン型)
A 膀胱洗浄目的で使用した膀胱留置用ディスポーザブルカテーテル
B 腹水の排液目的で使用した栄養カテーテル(経鼻用・一般用)
C 脊髄の実質性出血等で、結紮、レーザーメス又は通常の処置による止血が無効又は実施できない場合ではない場合に使用した微線維性コラーゲン
D 在宅医療の部以外の場合に使用した非固着性シリコンガーゼ(平坦部位用)
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