個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、近畿厚生局の医科の指導監査での、在宅医療、往診料、在宅患者訪問診療料、在宅療養指導管理料、在宅療養指導管理材料加算、在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料、検査、腫瘍マーカー、コンタクトレンズ検査料、画像診断に関する指摘事項をご説明します。
指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成28年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。
個別指導に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
5 在宅医療
1 在宅患者診療・指導料について
@ 往診料
ア 患家の求めに応じて患家に赴いたことが不明である。
イ 患家の求めに応じて診療を行ったと認められない場合に算定している。
ウ 診療録に患家の求めの内容や患家からの連絡の態様、患家の求めのあった時刻等を診療録に記載する等の方法により、算定根拠を明確にされたい。特に、往診料の注1の加算のうち、夜間又は深夜の往診の加算(いわゆる夜間往診加算又は深夜往診加算)を算定するにあたっては、留意すること。
エ 定期的ないし計画的に患家に赴き診療を行った場合に算定している。
オ 特別養護老人ホームの入所者に対し特別の必要があって行う診療でないにもかかわらず、算定している。
カ 有料老人ホーム等であって、その形態から当該ホーム全体を同一の看家とみなすことが適当であるものにおいて、2人以上の患者に対して診療した場合に、2人目以降の患者について算定している。
キ 入院患者に係る対診について、特掲診療料に係る費用を算定している。
ク 緊急往診加算について、標榜時間外の往診に対して算定している。
ケ 緊急往診加算について、速やかに往診をしなければならないと判断した根拠が不明である。
A 在宅患者訪問診療料
ア 訪問診療の必要性がない又は乏しい患者に対して算定している。
イ 在宅での療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者に対して定期的に訪問して診療を行った場合に算定できるものであること。
ウ 当該患者又はその患者等の署名付きの訪問診療に係る同意書を作成していない、又は診療録に添付していない。
エ 訪問診療の計画及び診療内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
オ 訪問診療を行った日における当該医師の当該在宅患者に対する診療時間(開始時刻及び終了時刻)及び診療場所について診療録に記載していない。
カ 在宅療養支援診療所若しくは在宅療養支援診療所と連携する保険医療機関又は在宅療養支援病院でないにもかかわらず、往診の日の翌日に行った訪問診療について算定している。
キ 介護老人保健施設の入所者に対して算定している。
ク 同居する同一世帯の複数の患者に対し診察をしているにもかかわらず、2人目以降の患者に当該診療料を算定している。
B 在宅時医学総合管理料
ア 総合的な在宅療養計画を作成し、その内容を患者、家族及びその看護に当たる者等に対して説明すること。
イ 在宅療養計画及び説明の要点等の診療録への記載内容が乏しい。
ウ 訪問診療の必要性がない又は乏しい患者に対して算定している。
エ 同一月内において院外処方せんを交付しない訪問診療のみ実施した場合について、処方せんを交付した場合の点数を算定している。
C 施設入居時等医学総合管理料
ア 診療録に在宅療養計画及び説明の要点等の記載がされていない又は記載内容が不十分である。
D 在宅がん医療総合診療料
ア 在宅がん医療総合診療料は、在宅での療養を行っている末期の悪性腫瘍の患者であって通院が困難なものに対して、その同意を得て、計画的な医学管理の下に総合的な医療を提供した場合に算定できるものであることに留意すること。
E 在宅患者訪問看護・指導料
ア 医師が保健師、助産師、看護師又は准看護師に対して行った指示内容について、診療録に記載されていない。
F 在宅患者訪問点滴注射管理指導料
ア 看護師等への指示内容の診療録への記載がない。
G 訪問看護指示料及び特別訪問看護指示加算
ア 訪問看護指示書等の写しを診療録に添付していない。
イ 訪問看護指示料は、在宅での療養を行っている患者であって、疾病、負傷のために通院による療養が困難な者に対して訪問看護指示書に有効期間(6月以内に限る。)を記載して、当該患者が選定する訪問看護ステーションに対して交付した場合に算定すること。
H 在宅患者緊急時等カンファレンス料
ア カンファレンスに参加した医療関係職種等の氏名、カンファレンスの要点、患者に行った指導の要点及びカンファレンスを行った日を診療録に記載すること。
2 在宅療養指導管理料について
@次の在宅療養指導管理料について、当該在宅療養を指示した根拠、指示事項及び指導内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
ア 在宅自己注射指導管理料
イ 在宅酸素療法指導管理料
ウ 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料
エ 在宅人工呼吸指導管理料
オ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料
カ 在宅気管切開患者指導管理料
A在宅自己注射指導管理料について、在宅自己注射の指導内容を詳細に記載した文書を作成していない。
B在宅自己注射指導管理料を算定している患者の外来受診時に、当該在宅自己注射指導管理にかかるG000 皮内、皮下及び筋肉注射及び注射薬の費用を算定している。
C介護老人保健施設の入所者に対して行った診療において、在宅酸素療法指導管理料を算定している。
D2以上の保険医療機関が同一の患者について同一の在宅療養指導管理料を算定すべき指導を行っている場合には、主たる指導管理を行っている保険医療機関において当該在宅療養指導管理料を算定すること。
3 在宅療養指導管理材料加算について
@ 血糖自己測定器加算
ア 自己測定の記録に基づいた指導を実施していない患者に対して算定している。
イ 血糖自己測定の回数の根拠が明確ではない。
4 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料について
@在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料の算定において、理学療法士等の指導内容の要点及び指導に要した時間の記録が不十分である。
6 検査
1 検査項目の選択
検査は、患者個々の症状・所見に応じて検査の項目を選択し、段階を踏み、セット検査を漫然と反復することなく、適切に行うこと。
2 検査の範囲
検査項目、回数は治療方針に的確に反映させる範囲でなければならない。
また、検査結果を適宜評価し、診療録にその要点を記載して治療に反映すること。
3 不適切な実施例
@医学的に必要性が乏しい検査
ア 段階を踏んでいない検査
イ 重複と見なされる検査
【例】感染症検査
ウ 必要以上に実施回数の多い検査
【例】生化学検査(T)
A健康診断として実施した検査
4 その他
@ 尿沈渣(鏡検法)
ア 尿中一般物質定性半定量検査もしくは尿中特殊物質定性定量検査において異常所見が認められた場合、又は診察の結果から実施の必要があると考えられる場合ではないにもかかわらず、実施している。
イ 検査の対象患者の診療を行っている保険医療機関内で実施しておらず、算定要件を満たしていない。
A 腫瘍マーカー
ア 診察及び他の検査・画像診断等の結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者以外の者に対して実施している。
イ 悪性腫瘍の診断確定又は転帰の決定までの間に2回以上実施している。
ウ 悪性腫瘍の診断が確定した患者について、悪性腫瘍特異物質治療管理料ではなく、腫瘍マーカー検査を算定している。
【例】CEA、CA19-9
エ 腫瘍マーカー検査について、検査を行う必要性の診療録への記載が不十分な例が見受けられたので改めること。
B 呼吸心拍監視
ア 診療録に観察した呼吸曲線、心電曲線、心拍数の観察結果の要点の記載がない。
C 経皮的動脈血酸素飽和度測定
ア 呼吸不全若しくは循環不全又は術後の患者であって、酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を現に行っているもの又は酸素吸入若しくは突発性難聴に対する酸素療法を行う必要があるものに行った場合及び静脈麻酔、硬膜外麻酔又は脊椎麻酔を実施中の患者に行った場合に算定できるものであること。
D 眼科学的検査
ア 屈折検査「2 1以外の場合」
・ 矯正視力検査と併施した場合は、屈折異常の疑いがあるとして初めて検査を行った場合又は眼鏡処方せんを交付した場合に限り併せて算定すること。
E コンタクトレンズ検査料
ア コンタクトレンズ装用を目的に受診した患者(既装用者の場合を含む。)に対して眼科学的検査を行った場合は、コンタクトレンズ検査料を算定すること。
イ 新たな疾患の発生(屈折異常以外の疾患の急性増悪を含む)等により、コンタクトレンズの装用を中止し、コンタクトレンズ検査料以外の眼科学的検査を算定する場合は、診療録にコンタクトレンズの装用を中止したことを記載することにより算定の根拠を明確にすること。
F 血液採取
ア 糖試験紙法にかかる血液採取についてD400血液採取の「2 その他」で算定すべきところ、「1 静脈」で算定している。
G その他
ア 時間外緊急院内検査加算について、直ちに何らかの処置・手術等が必要である重篤な患者について、通常の診療のみでは的確な診断が困難であり、かつ、通常の検査体制が整うまで検査の実施を見合わせることができないような緊急の場合に、保険医療機関内に具備されている検査機器等を用いて当該検体検査を実施したものではないにもかかわらず、算定している。
イ 外来迅速検体検査加算について、別に厚生労働大臣が定める検体検査の結果を検査実施日のうちに説明した上で文書により情報提供し、当該検査の結果に基づく診療が行われた場合に算定すること。
ウ 外来迅速検体検査加算について、別に厚生労働大臣が定める検査に含まれていない血液化学検査(糖(固定化酵素電極によるもの))により算定している。
エ 検査を行う際には、検査を行う必要性を診療録に記載すること。
【例】血液検査
7 画像診断
1 画像診断の不適切な実施例
@医学的に必要性が乏しい画像診断
ア コンピューター断層撮影
2 その他
@時間外緊急院内画像診断加算について、医師が緊急に画像診断を行う必要性を判断することなく、自動的に算定している例が認められたので改めること。
A画像診断管理加算2について、地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当する常勤の医師以外の者が読影したものについて算定している。
B単純撮影(胸部・腹部・骨折部等)の写真診断について、診療録に診断内容を記載していない。
C 画像診断において、検査に至った動機並びにその結果、評価に関する記載が乏しい例が認められたので、記載を充実すること。
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