個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、近畿厚生局の医科の個別指導での、投薬、注射、リハビリテーション、精神科専門療法、処置、手術、麻酔、病理診断、一部負担金、保険外負担、院内掲示、届出事項、包括評価に関する指摘事項をご説明します。
指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成28年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。
保険診療の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
8 投薬・注射
1 適応外投与
次の適応外投与の例が認められたので改めること。
@リウマチ性疾患の患者に対するプレドニン20r〔水溶性〕の点滴による投与
A適応疾患以外に対するシーピー配合顆粒の投与
B適応疾患以外に対するゼンアスピリン錠100 の投与
C不整脈以外の患者に対する静注用キシロカインの投与
D抗生物質を投与していない患者に対する耐性乳酸菌製剤(ビオフェルミンR錠)の投与
E尿閉の患者に対するベシケア錠5rの投与
F胃潰瘍、十二指腸潰瘍等以外の患者に対するイサロン錠100mg の投与
2 用法外投与
次の用法外投与の例が認められたので改めること。
@局所投与している塩酸バンコマイシン点滴静注用0.5g
Aネブライザーを用いて投与しているアミカマイシン注射液200mg
B局所投与しているイセパシン注射液200
C投与間隔を2週間以上空けずに投与しているハイコート注4r(0.4%)
3 長期漫然投与
次の長期漫然投与の例が認められたので改めること。
@メチコバール錠の月余にわたる漫然投与
4 重複投与
次の重複投与の例が認められたので改めること。
@H2ブロッカーとPPIの投与
5 過剰投与
次の過量投与の例が認められたので改めること。
@チオラ錠を2日連続で28 日分投与
6 不適切な薬剤投与
薬剤の投与について、次の不適切な例が認められたので改めること。
@食事摂取可能な患者にビタミン製剤を投与しているものについて、必要かつ有効と判断した趣旨を診療録及び診療報酬明細書に記載していない。
なお、ビタミン剤が算定できるのは、医師が当該ビタミン剤の投与が有効であると判断し、適正に投与された場合等に限られるものであり、原則として食事から必要なビタミンを摂取できる場合には算定できないことに留意すること。
A経口投与が可能であるものについて、注射により薬剤を投与している。
7 不適切な薬剤・注射
@ 院外処方せん
ア 院外処方せんについて、様式が定められたもの又はこれに準ずるものとなっていない。
イ 記載内容が不十分な例が認められたので改めること。
ウ 用法の記載が不適切である。
【例】医師の指示通り
A 注射実施料
ア 精密持続点滴注射加算について、1時間に30mL より速い速度で注入しているものについて算定している。
7 不適切例
@外来患者の内服薬について、7種類以上の薬剤投与時の低減を適切に行っていない。
A薬剤料について、2種類以上の内服薬を調剤した場合の診療報酬明細書への記載方法が誤っている。(服薬時点が同時で、かつ服用回数も同じであるものを1剤とみなしていない。)
B経口投与が可能である患者について、内服薬と併用して注射により薬剤を投与している。
内服薬との併用は、これによって著しく治療の効果を上げることが明らかな場合又は内服薬の投与だけでは治療の効果を期待することが困難である場合に限って行うこと。
C長期投薬加算について、特定疾患に直接適応のある薬剤を処方していないにもかかわらず、算定している。
D処方せんを、患者又は現にその看護にあたっている者に対して交付していない。
E一般名処方加算について、一般的名称で処方が行われたことの何らかの記録が診療録に残されていない。
F診療録に、医師が投与又は看護師へ投与を指示した記載がなく、投与したことが確認できない。
G診断根拠のない病名(肝炎)に基づくグリファーゲン静注の投与が認められた。
H調剤技術基本料について、薬剤師が常時勤務していないにもかかわらず算定していた例が認められたので、改めること。
9 その他
@薬剤の処方に当たっては、医薬品名・規格単位・用法および用量を的確に診療録に記載すること。
A投薬量は、予見することができる必要期間に従ったものでなければならないこととし、厚生労働大臣が定める内服薬、外用薬及び注射薬については、1 回14 日分、30日分又は90 日分を限度として投与できるものであることに留意すること。
B後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならないこと。
C適応・用法・用量等の医薬品医療機器等法(旧薬事法)承認事項を遵守し、同一薬効の薬剤の重複投与、経口投与と静脈内投与の重複は避けられたい。また、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう注意すること。
D投薬における薬剤(シナール配合錠、トランサミン錠)の使用に当たっては、適応について医薬品医療機器等法承認事項を順守すること。また、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう注意すること。
E注射における薬剤の投与に係る処方に当たっては、診療録に治療計画を記載し、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう留意すること。
F特定疾患処方管理加算は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者について、処方管理を行った場合に算定すること。また、28 日以上の処方を行った場合の算定要件に留意すること。
G高血圧症の患者に対する投薬について、4種類以上の降圧剤を処方している例が見られたので、高血圧治療のガイドラインに沿った処方を行うよう留意すること。
9 リハビリテーション
1 疾患別リハビリテーションについて
@ 実施体制
ア リハビリテーションに従事する職員1人ごとの毎日の訓練実施終了患者の一覧
表を作成しておらず、職員1人1日当たりの実施単位数を適切に管理していない。
A リハビリテーション実施計画
ア 開始時及び3か月毎に患者に対して実施計画を説明していない。
イ 開始時及び3か月毎の実施計画の説明の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
ウ リハビリテーション実施計画を作成する前に、リハビリテーションを実施している。
B 訓練の記録
ア 訓練の開始時刻及び終了時刻の記載が画一的である。
イ 訓練の開始時刻及び終了時刻について、診療録等の記載がない。
ウ 訓練実施担当者名の記載がない。
エ 疾患別リハビリテーションについて、診療録等に訓練内容の要点等の記載が乏しい例が認められたので改めること。
C 適応
ア 消炎鎮痛等処置で算定すべきものについて、運動器リハビリテーション料(V)を算定している。
D その他
ア 標準的算定日数を超えて継続してリハビリテーションを行う患者について、算定単位数上限を超過して誤って算定している。
イ 早期リハビリテーション加算及び初期加算について、誤った起算日に基づいて算定している。
ウ いわゆる「みなし理学療法士」である柔道整復師が実施した運動器リハビリテーションを運動器リハビリテーション料(U)で算定している。
2 リハビリテーション総合計画評価料について
@リハビリテーション総合実施計画書において、「1ヵ月後の目標」及び「リハビリテーションの治療方針」を記載していない。
3 摂食機能療法について
@ 治療開始日を診療録に記載していない。
A 訓練内容について診療録への記載が乏しい。
10 精神科専門療法
@入院精神療法について、診療録に当該療法の要点を記載していない、又は記載が乏しい。
A通院・在宅精神療法について、診療録への当該診療に要した時間の記載が不適切である。
B通院・在宅精神療法について、診療録への診療の要点の記載が乏しい。
C精神科継続外来支援・指導料の算定において、診療録への指導内容の要点記載に不十分な例が見受けられたので、記載を充実すること。
D標準型精神分析療法について、診療録に当該療法の要点記載の乏しい例が見受けられたので記載内容等の充実を図ること。
E精神科デイ・ケアについて、診療録に診療時間を明確に記載すること、又は記載がない。
F精神科訪問看護・指導料「注5」の加算について、医師が、複数の保健師等による患家への訪問が必要と判断した理由を診療録に記載するなどし、算定根拠を明確にすること。
G精神科訪問看護・指導料について、実施した訪問時間(開始時刻及び終了時刻)を記録していない。
11 処置
@創傷処置及び消炎鎮痛等処置について、診療録の処置内容の記載が乏しい例が認められたので改めること。
A人工腎臓について、著しく人工腎臓が困難な障害者等に該当しない患者に対して障害者等加算を算定している。
B皮膚レーザー照射療法について、一連の治療として1回のみ所定点数を算定すべきところ、一連と扱わずに算定している。
C導尿について、尿道拡張を要する場合とはいえないものに対して算定している。
D診察の際行った膣洗浄について膣炎、頸管カタル等治療として洗浄を必要とする疾病以外にも算定している例が認められたので改めること。
E結膜異物除去(1眼瞼ごと)及び睫毛抜去を算定しているものについて、処置の範囲、内容を診療録に記載していない例が認められたので改めること。
F耳垢栓塞除去(複雑なもの)について、診療録の記載等からは、耳垢水を用いなければ除去できない耳垢栓塞を完全に除去したことが判断できない。
G消炎鎮痛等処置について、診療内容が診療録に記載されていないなど当該処置を行ったことが確認できない。
H診療録への所見等の記載が乏しい。
I基本診療料に含まれる処置について算定している。
12 手術
1 手術について
@手術内容の診療録記載が乏しい。
A黒子に対する炭酸ガスレーザーの照射について、「皮膚、皮下腫瘍摘出術」を算定している。
B本来算定すべき術式と異なる術式で算定している。
【例】K005 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)をK003 皮膚、皮下、粘膜下血管腫摘出術(露出部)で算定
C手術の説明文書を作成していない。
D手術を施行した場合には、手術記録の記載内容を充実すること。
2 輸血料について
@輸血に伴う血液型検査の費用について、血液型が既知の患者に対して算定している。
13 麻酔
@麻酔管理料の算定にあたっては、麻酔前後の診察及び麻酔の内容を診療録に記載すること。
A施設基準として地方厚生(支)局長に届け出た常勤の麻酔科標榜医以外の者が麻酔を行ったものについて算定している。
Bトリガーポイント注射を行う場合は、トリガーポイントの部位を具体的に記載すること。
14 病理診断
@病理判断料の算定にあたっては、診療録に病理学的検査の結果に基づく病理判断の要点を記載すること。
15 診療報酬明細書の記載
@主傷病名について
ア 主傷病名ではない傷病名を主傷病名としている。
イ 主傷病名が明確となっていない。主傷病については原則1つとし、複数ある場合は「(主)」などと主傷病が判別できるように記載すること。
A摘要欄の記載について
ア 特定薬剤治療管理料について、摘要欄に薬剤の血中濃度を測定している薬剤名及び初回の算定年月を記載していない。
イ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料について、摘要欄に初回の指導管理を行った月日、睡眠ポリグラフィー上の所見及び当該管理料を算定する日の自覚症状等の所見を記載していない。
ウ 血糖自己測定器加算を算定した場合は、実際の血糖自己測定の回数を記載すること。
エ 当該月に訪問診療料と往診料の算定が混在する場合に、訪問診療及び往診を行った日を記載していない。
オ 特定保険医療材料等について、商品名を診療報酬明細書に記載していない。
【例】ダイアライザー
カ 在宅酸素療法指導管理料について、摘要欄に動脈血酸素分圧の測定結果を記載していない。
B症状詳記の記載について
ア 診療報酬明細書に添付した症状詳記(病状説明)における特定保険医療材料の必要性に係る記載内容について、画一的な例が認められた。個々の患者の病状に応じた記載内容とするよう改めること。
【例】体外式連続心拍量測定用センサー
C診療録様式第1号(1)の1に記載されている傷病名の一部が記載されていない。
D診療報酬明細書に傷病名及び診療開始日を適切に記載していない。
E医師のオーダーによらず、特定疾患治療管理料(難病外来指導管理料)を自動的に算定している。
F診療報酬明細書は、提出前に必ず医師自らが診療録等と突合し、記載事項に誤りや不備がないか等について十分点検すること。
16 一部負担金の受領
@受領すべき者から受領していない。
【例】従業員及びその家族
A計算方法に誤りがある。
B患者から一部負担金を徴収した後に診療報酬の請求内容を変更し、又は減額査定されたことにより、患者から徴収した一部負担金額に変更が生じた場合は、差額を徴収又は返金すること。
C一部負担金の徴収について、日計表に領収日を記載するなど、患者から領収した経緯を明確にしておくこと。
D未収の一部負担金に係る管理簿を作成していない。
E患者から一部負担金を受領したときは、その都度、領収証及び明細書を発行すること。
17 保険外負担等
@療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないものについて、患者から費用を徴収している。
【例】薬袋代、薬剤の容器代
18 院内掲示・届出事項
1 掲示について
@掲示について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
ア 施設基準に関する事項を掲示していない。
イ 保険外負担に関する事項を掲示していない。
ウ 明細書の発行等に関する事項を掲示していない。
2 届出事項の変更について
@次の届出事項の変更が認められたので、速やかに届け出ること。
ア 保険医の異動
イ 診療科目の変更
ウ 診療日・診療時間の変更
19 包括評価(DPC)に係る事項
1 診断群分類及び傷病名について
@妥当と考えられる診断群分類番号と異なる診断群分類番号で算定している次の不適切な例が認められたので改めること。
ア 最も医療資源を投入した傷病名(ICD-10 傷病名)が、実際に最も医療資源を投入した傷病名と異なる。
2 包括評価に関わるその他の事項
@包括範囲について、理解が誤っている次の例が認められたので改めること。
ア 術後疼痛に対する注射を実施するために使用した特定保険医療材料を出来高で算定している。
・ 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ・PCA型
20 その他特記事項
@審査支払機関からの返戻・増減点通知書を一部紛失している例が認められた。療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録は、その完結の日から3年間保存すること。
A療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から3年間、診療録にあっては、その完結の日から5年間保存しなければならないことに留意すること。
B審査支払機関からの返戻・増減点通知書について、内容を十分検討し、以後の治療や保険請求に反映させること。
C診療報酬の請求を行うにあたって、保険医は診療報酬明細書と診療録を照合するなど、請求内容が適正なものとなるよう努めること。
D前回の個別指導において、指摘事項に対する改善報告書を提出しているにもかかわらず改善が不十分であったため、より一層の改善を図ること。
E医師が自分自身の診療録に自ら記載(自己診療)している。医師は必ず、別の医師の診療に基づいて検査・投薬・注射等を受けること。
保険診療の個別指導、監査に臨む医師の方は、お電話下さい。個別指導、監査への対応方法を弁護士がアドバイスします。