医科の指導監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、個別指導と監査の対応業務を行っています。
個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。
弁護士鈴木が力を入れている医院法務に関するコラムです。
ここでは、近畿厚生局の医科の個別指導での、投薬、注射、リハビリテーション、精神科専門療法、処置、手術、麻酔、病理診断、入院時食事療養費、一部負担金、保険外負担、院内掲示、届出事項などに関する代表的な指摘事項についてご説明を致します。 指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成27年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。
厚生局の個別指導、監査に悩んでいる医師の方は、指導、監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導、監査においては、弁護士を立ち会わせるべきです。以下のコラムもご覧いただければ幸いです。
指導監査のコラム
1 個別指導と監査の上手な対応法
投薬・注射
禁忌投与
〇 次の禁忌投与の例が認められたので改めること。
・ 消化性潰瘍のある患者に対するカロナール錠の投与
・ クレストール錠50mgとネオーラル25mgカプセルの併用投与
適応外投与
〇 次の適応外投与の例が認められたので改めること。
・ 感染病名のない患者に対するメロペン点滴用バイアル0.5gの点滴注射
・ 抗生物質を投与していない患者に対する耐性乳酸菌製剤の投与
・ 統合失調症以外の患者に対するハロマンス注50mgの投与
・ 手術中の患者に投与しているロピオン静注50mg
用法外投与
〇 次の用法外投与の例が認められたので改めること。
・ 局所投与しているアミカシン硫酸塩注射液200mg
・ 局所投与している塩酸バンコマイシン点滴静注用0.5g
長期漫然投与
〇 次の長期漫然投与の例が認められたので改めること。
・ PPIの長期にわたる投与
・ H2受容体拮抗剤の長期にわたる投与
重複投与
〇 次の重複投与の例が認められたので改めること。
・ H2ブロッカーとPPIの投与
その他
〇 その他
・ 投薬量は、予見することができる必要期間に従ったものでなければならないこととし、厚生労働大臣が定める内服薬、外用薬及び注射薬については、1回14日分、30日分又は90日分を限度として投与できるものであることに留意すること。
・ 同一患者について、院内に必要な薬剤がないことを理由として院外処方せんの交付による投薬をする日と院内処方による投薬をする日が混在している。
・ 後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等、患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならないこと。
・ 食事摂取可能な患者にビタミン製剤を投与しているものについて、必要かつ有効と判断した趣旨を診療録及び診療報酬明細書に記載していない。なお、ビタミン剤が算定できるのは、医師が当該ビタミン剤の投与が有効であると判断し、適正に投与された場合等に限られるものであり、原則として食事から必要なビタミンを摂取できる場合には算定できないことに留意すること。
・ 院外処方せんについて、様式が定められたもの又はこれに準ずるものとなっていない。(処方薬の「変更不可」欄がない)
・ 電話再診時に投薬している。
・ 長期投薬加算について、特定疾患に直接適応のある薬剤を処方していないにもかかわらず、算定している。
・ 経口投与が可能であるものについて、注射により薬剤を投与している。
・ 経口投与が可能である患者について、内服薬と併用して注射により薬剤を投与している。内服薬との併用は、これによって著しく治療の効果を上げることが明らかな場合又は内服薬の投与だけでは治療の効果を期待することが困難である場合に限って行うこと。
・ 適応・用法・用量等の医薬品医療機器等法(旧薬事法)承認事項を遵守し、同一薬効の薬剤の重複投与、経口投与と静脈内投与の重複は避けられたい。また、適時治療効果の判定を行い漫然と投与することのないよう注意すること。
・ 爪白癬治療薬の使用について、細菌顕微鏡検査等適正な手段を踏まずに投与している。
・ 厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者以外の患者に対して特定疾患処方管理加算を算定している。
・ 処方せんを、患者又は現にその看護にあたっている者に対して交付していない。
・ プラスチックカニューレ型静脈内留置針について、24 時間未満の留置であるにもかかわらず算定している。
・ 特段の事情がないにもかかわらず家族から症状を聞いて薬剤を投与していた。
・ 外来化学療法加算は、悪性腫瘍等の患者に対して、抗悪性腫瘍剤等による注射の必要性、副作用、用法、用量、その他の留意点について、文書で説明し同意を得た上で、外来化学療法に係る専用室において、悪性腫瘍等の治療を目的として抗悪性腫瘍剤等が投与された場合に算定すること。
・ 特定疾患処方管理加算は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者について、処方管理を行った場合に算定すること。また、28日以上の処方を行った場合の算定要件に留意すること。
リハビリテーション
疾患別リハビリテーションについて
〇 リハビリテーション実施計画の説明
・ 開始時及び3か月毎に患者に対して実施計画を説明していない。
・ 開始時及び3か月毎の実施計画の説明の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
・ 実施計画書の内容に不備がある。
〇 訓練の記録
・ 訓練の開始時刻及び終了時刻の記載が画一的である。(例:実施時間が一律に20分間である。)
〇 適応
・ 医学的にリハビリテーションの適応に乏しい患者に実施している。
〇 リハビリテーションの起算日
・ 起算日が医学的に妥当ではない。
〇 その他
・ 早期リハビリテーション加算及び初期加算について、所定日数を超えて算定している。
リハビリテーション総合計画評価料について
〇 リハビリテーション総合実施計画書の記載内容が乏しい。
精神科専門療法
〇 通院・在宅精神療法について、診療録への当該診療に要した時間の記載が不適切である。
〇 通院・在宅精神療法について、診療録への診療の要点の記載が乏しい。
〇 標準型精神分析療法について、診療録への診療時間の記載が不適切である。
〇 抗精神病特定薬剤治療指導管理料について、診療録への指導内容の要点の記載が乏しい。
〇 医療保護入院等診療料について、診療録への治療計画・説明の要点の記載が不十分。
〇 重度認知症患者デイ・ケア料について、「認知症高齢者の日常生活度判定基準」がランクMに該当していないものに対して算定している。
〇 抗精神病特定薬剤治療指導管理料の「1」持続性抗精神病注射薬剤治療指導管理料について、統合失調症以外の患者で算定している。
〇 入院精神療法について、診療録に当該療法の要点を記載していない、又は記載が乏しい。
〇 精神科作業療法について、実施される作業内容の種類にかかわらず、その実施時間は患者1人当たり1日につき2時間を標準とすることに留意すること。
処置
〇 人工腎臓について、著しく人工腎臓が困難な障害者等に該当しない患者に対して障害者等加算を算定している。
〇 人工腎臓の実施時間に係る記載が画一的であるので、正確な時間を記載すること。
〇 皮膚科軟膏処置を実施した際に処置の範囲が診療録に記載されていない。
〇 耳垢栓塞除去(複雑なもの)について、診療録の記載等からは、耳垢水を用いなければ除去できない耳垢栓塞を完全に除去したことが判断できない。
〇 診療録への所見等の記載が乏しい。
〇 在宅自己導尿指導管理料に係る在宅療養指導管理材料加算を算定している患者について、膀胱洗浄の費用を算定している。
〇 扁桃処置について、処置した内容を診療録に記載していない。診療録は、保険請求の根拠となるものなので、必要事項の記載を十分に行うこと。
〇 消炎鎮痛等処置について、同一日に呼吸器リハビリテーション料(T)を算定しているにもかかわらず算定している。
〇 導尿について、尿道拡張を要する場合とはいえないものに対して算定している。
手術
〇 手術について
・ 手術内容の診療録記載が乏しい。
麻酔
〇 麻酔管理料の算定にあたっては、麻酔前後の診察及び麻酔の内容を診療録に記載すること。
病理診断
〇 病理判断料の算定にあたっては、診療録に病理学的検査の結果に基づく病理判断の要点を記載すること。
入院時食事療養費
〇 経口補水液のみを提供する場合や主として経静脈的に栄養投与されている患者に対し、腸内環境整備のためにわずかな栄養素のみを投与する場合等、当該患者に対して必要なエネルギーをまかなうための食事を提供していない場合は、入院時食事療養費を算定することはできないこと。
一部負担金等
〇 一部負担金の受領について
・ 受領すべき者から受領していない。(例:従業員及びその家族)
・ 計算方法に誤りがある。
・ 未収の一部負担金に係る納入督促を行っていない。
・ 患者から一部負担金を徴収した後に診療報酬の請求内容を変更し、又は減額査定されたことにより、患者から徴収した一部負担金額に変更が生じた場合は、差額を徴収又は返金すること。
・ 一部負担金の徴収について、日計表に領収日を記載するなど、患者から領収した経緯を明確にしておくこと。
保険外負担等
〇 療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないものについて、患者から費用を徴収している。
院内掲示・届出事項等
〇 院内掲示・届出事項等について
・ 院内掲示について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
・ 施設基準に関する事項を掲示していない。
・ 保険外負担に関する事項を掲示していない。
・ 明細書の発行等に関する事項を掲示していない。
〇 次の届出事項の変更が認められたので、速やかに届け出ること。
・ 保険医の異動
・ 診療科目の変更
・ 診療時間の変更
その他特記事項
〇 審査支払機関からの返戻・増減点通知書を一部紛失している例が認められた。療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録は、その完結の日から3年間保存すること。
〇 審査支払機関からの返戻・増減点通知書について、内容を十分検討し、以後の治療や保険請求に反映させること。
〇 診療報酬の請求を行うにあたって、保険医は診療報酬明細書と診療録を照合するなど、請求内容が適正なものとなるよう努めること。
〇 自己診療は、保険診療上認められないので、改めること。
〇 前回の個別指導において、指摘事項に対する改善報告書を提出しているにもかかわらず改善が不十分であったため、より一層の改善を図ること。
〇 特別養護老人ホーム等の職員(看護師・理学療法士等)が行った医療行為については診療報酬を算定できないので留意すること。
厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、お電話下さい。個別指導、監査への対応方法を弁護士がアドバイスします。