個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
ここでは、近畿厚生局の医科の個別指導での、初・再診料、入院料、入院基本料、特定疾患治療管理料、てんかん指導料、慢性疼痛疾患管理料、薬剤情報提供料、療養費同意書交付料の指摘事項をご説明します。
指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成28年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。
厚生局の個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。
【コラム】個別指導と監査の上手な対応法
3 基本診療料
1 初・再診料について
@ 初・再診料
ア 患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為があった場合に、初診料を算定すること。
イ 現に診療継続中の患者につき、新たに発生した他の傷病で初診を行った場合には、当該新たに発生した傷病について、初診料は算定できないこと。
ウ 慢性疾患等、明らかに以前受診した疾病又は負傷等と同一の疾病又は負傷等であると推定される場合の診療は、初診として取り扱わないので留意すること。
エ 当該保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関において過去にコンタクトレンズの装用を目的に受診したことのある患者について、当該検査料を算定した場合は、初診料を算定せず、再診料を算定すること。
オ コンタクトレンズを処方し眼科学的管理を行っている患者に屈折異常以外の他の疾病が新たに発生した場合は、初診料を算定せず、再診料を算定すること。
カ 初診又は再診に附随する一連の行為で来院したものについて再診料を算定している。
キ 同一日に他の傷病について、患者の意思に基づき、別の診療科を再診として受診した場合は、現に診療継続中の診療科1つに限り、再診料の注2に掲げる所定点数を算定できること。
ク 同一日の再診について、再診に係る根拠の診療録への記載を充実させること。
ケ 電話等を通した再診に係る再診料の算定においては、患者又はその看護にあたっている者からの医学的な意見の求めに対し、治療上必要な適切な指示を行うこと。
コ 再診料について、訪問診療を行った後、単に家族に対し処方せんを発行した場合に算定している。
サ 健康診断を目的とした受診について初診料を算定している。
シ 自他覚症状がなく健康診断を目的とする受診により疾患が発見された患者について、当該保険医が、特に治療の必要性を認め治療を開始したにもかかわらず、初診料を算定している。
ス 同一の保険医が別の医療機関において、同一の患者について診療を行った場合に、最初に診療を行った医療機関でないにもかかわらず、初診料を算定している。
セ 保険外診療に係る診断書の交付のための診療について、再診料を算定している。
ソ 療養費同意書の交付のみ行った患者について、再診料を算定している。
タ 再診料について、特別養護老人ホームの入所者に対し、定期的ないし計画的に診療を行っている例について算定している。
チ 初・再診料について、特別養護老人ホームの配置医師が入所者に対して特別の必要があって行う診療でないにもかかわらず算定している。
A 時間外加算等
ア 常態として診療応需の態勢をとっているときは時間外の取扱いはできないものであること。
イ 急病等やむを得ない理由により受診した患者でないにもかかわらず、休日加算を算定している。
B 夜間・早朝等加算
ア 診療録等に受付時間を記録するなどにより算定要件を満たしていることを明確にされたい。
C 外来管理加算
ア 患者からの聴取事項や診察所見の要点の診療録への記載がない又は記載が乏しい。
イ 医師が丁寧な問診と詳細な身体診察を行い、それらの結果を踏まえて患者に対して症状の再確認を行いつつ、病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、患者の療養上の疑問や不安を解消する取組みを行うこと。
ウ やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤投与した場合には、外来管理加算は算定できないこと。
エ 処置を行っているにもかかわらず、処置料を算定せず、外来管理加算を算定している。
D 地域包括診療加算
ア 初回算定時に患者の署名付きの同意書が作成されていない。
イ 他の保険医療機関と連携の上、患者が受診している全ての医療機関を把握し、処方されている医薬品全てを管理している内容について、診療録に記載がない。
2 入院料について
@ 入院診療計画
ア 説明に用いた文書について、参考様式で示している以下の項目の記載がない。
・ 年月日
・ 主治医氏名(ゴム印のみで押印がない。)
イ 説明に用いた文書について、記載内容が不適切である。
・ 記載内容が画一的であり、個々の患者の病状に応じたものとなっていない。
ウ 関係職種が共同して策定していない。
エ 入院診療計画書について、参考様式の内容に準拠しておらず、記載内容が画一的であり、個々の患者の症状に応じたものとなっていない。
A 栄養管理体制
ア 栄養管理計画書に必要事項(栄養状態の評価)の記載が乏しい。
3 入院基本料について
@ 障害者施設等入院基本料
ア 90 日を超えて入院する患者で、厚生労働大臣が定める状態(1日に8回以上喀痰吸引・排出を実施している日が当該月に20 回以上であること等)でないにもかかわらず、特定入院基本料で算定していない。
4 入院基本料等加算について
@ 特殊疾患入院施設管理加算
ア 対象患者と判断した根拠を明確にすること。
A 療養環境加算
ア 特別の療養環境の提供に係る病室について、加算対象にしている。
4 医学管理
1 特定疾患療養管理料について
@管理内容の要点を診療録に記載していない、要点の記載が乏しい又は画一的である。
A厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理が行われていない。
B厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする者に対し、実際に主病を中心とした療養上必要な管理が行われていない場合又は実態的に主病に対する治療が行われていない場合は算定できないので留意すること。
なお、主病とは、当該患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患をいうものであること。
C厚生労働大臣が別に定める疾患を主病とする患者以外の患者に対して算定している。
D特別養護老人ホーム等に入居している患者に対し、定期的に訪問して診療を行った場合において算定している。
2 特定疾患治療管理料について
@ 特定薬剤治療管理料
ア 薬剤の血中濃度及び治療計画の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 血中濃度を測定していないにもかかわらず、誤って算定している。
ウ 初回月加算について、血中濃度を頻回に測定していないにもかかわらず算定している。
A 悪性腫瘍特異物質治療管理料
ア 腫瘍マーカー検査の結果及び治療計画の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
B 小児特定疾患カウンセリング料
ア 厚生労働大臣が定める患者以外について算定している。
C てんかん指導料
ア 診療計画及び診療内容の要点の診療録への記載が乏しい。
D 難病外来指導管理料
ア 診療計画及び診療内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
E 皮膚科特定疾患指導管理料
ア 診療計画及び指導内容の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい(画一的である)。
イ 皮膚科特定疾患指導管理料(U)について、対象となる特定疾患でないにもかかわらず算定している。
F 外来栄養食事指導料
ア 医師が管理栄養士に対して指示した事項を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
G 入院栄養食事指導料
ア 管理栄養士への指示事項の診療録への記載が乏しい。
イ 診療録に医師が管理栄養士に対して指示した事項の記載がない。
ウ 管理栄養士への指示事項に、熱量・熱量構成、蛋白質、脂質その他の栄養素の量、病態に応じた食事の形態等に係る情報のうち、医師が必要と認めるものに関する具体的指示が含まれていない。
H 慢性維持透析患者外来医学管理料
ア 特定の検査結果及び計画的な治療管理の要点を診療録に記載していない又は記載が乏しい。
イ 当該管理料に含まれ、別に算定できない検査料について算定している。
【例】副甲状腺ホルモン(PTH)
I 慢性疼痛疾患管理料
ア マッサージ又は器具等による療法を行っていないにもかかわらず、算定している。
J 鼻咽喉科特定疾患指導管理料
ア 診療計画及び指導内容の要点の診療録への記載が乏しい。
K がん性疼痛緩和指導管理料
ア 診療計画及び指導内容の要点の診療録への記載が乏しい。
3 乳幼児育児栄養指導料について
@育児、栄養その他必要な指導を行っていない例について算定していたので改めること。
4 生活習慣病管理料について
@療養計画書により丁寧に説明を行い、患者の同意を得るとともに、当該計画書に患者の署名を受けること。
また、交付した療養計画書の写しを診療録に貼付すること。
A療養計画書を作成していない。
B療養計画書の記載内容が患者個々の特性に応じた内容となっていない。
5 ニコチン依存症管理料について
@治療管理の要点を診療録に記載していない。
Aニコチン依存症と診断された根拠が記載されていない。
6 肺血栓塞栓症予防管理料について
@肺血栓塞栓症を発症する危険性について評価していない。
7 診療情報提供料(T)について
@診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認めこれに対し患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定できるものであること。
A紹介元医療機関への受診行動を伴わない患者紹介の返事について算定している。
B紹介先の機関名を特定していない。
C紹介先の機関ごとに所定の様式又はこれに準じた様式の文書に必要事項を記載すること。
D交付した文書の写しを診療録に添付していない。
E注7の加算について、画像診断を実施したにもかかわらず、画像情報が添付されていない。
F同一紹介先医療機関に対する、同月2回目の提供について算定している。
G保険薬局への診療情報提供において、処方せんの写しが診療録に添付されていない。
H診療情報提供料(T)について、診療状況を示す文書の内容が乏しい例が見受けられたので記載内容の充実を図ること。
8 薬剤情報提供料について
@薬剤情報を提供した旨を診療録に記載していない。
A薬剤情報の患者提供文書への記載が不十分な例が認められた。
B処方の内容に変更がないにもかかわらず、月2回以上算定している。
C手帳記載加算は、処方した薬剤の名称等を当該患者の求めに応じて手帳に記載した場合に算定すること。また、薬剤の名称が記載された簡潔な文書(シール等)を交付した場合は算定できないことに留意すること。
9 療養費同意書交付料について
@医師が療養の給付を行うことが困難であると認めた患者に対して算定するものであるところ、当該負傷や疾患等につき、自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに施術業者の施術を受けさせることに同意を与えている。
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