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厚生局の医科個別指導での、請求事務などの指摘事項です。指導、監査に臨む医師の方は、個別指導、監査に強い弁護士にご相談下さい。

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近畿厚生局の個別指導(12):厚生局の医科個別指導(請求事務)

個別指導と監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、近畿厚生局の医科の個別指導での、請求事務などの指摘事項をご説明します。 指摘事項は、近畿厚生局の公表資料「平成30年度 個別指導(医科)における主な指摘事項」に基づいています。

厚生局の個別指導(医科)に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

 【コラム】個別指導と監査の上手な対応法


1 目次


Ⅰ 診療に係る事項

1 リハビリテーション
2 精神科専門療法
3 処置
4 手術


Ⅱ 管理、請求事務、施設基準等に係る事項

1 診療録等
2 診療報酬明細書の記載等
3 基本診療料
4 病理診断
5 特定保健医療材料等
6 一部負担金等
7 掲示・届出事項等
8 管理、請求事務等に係るその他の事項


Ⅲ その他特記事項



2 診療に係る事項


 1 リハビリテーション

(1)疾患別リハビリテーションについて、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 実施体制
 ア 従事者1人1日当たりの実施単位数を適切に管理していない。
 イ 職員1人当たりの実施単位が1週間で108単位を超過している。
② リハビリテーション実施計画
 ア 開始時の又は3か月毎の実施計画の説明の要点を診療録に記載していない。
③ 機能訓練の記録
 ア 機能訓練の内容の要点について診療録等への記録が画一的である。
 イ 機能訓練の開始時刻及び終了時刻の診療録等への記載がない又は画一的である。
④ 適応及び内容
 ア 医学的に最も適当な区分とは考えられない区分で算定している。
⑤ リハビリテーションの起算日
 ア 起算日が医学的に妥当ではない。

(2)リハビリテーション総合計画評価料 [ 1 ・ 2 ]について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① リハビリテーション総合実施計画書について、理学療法士が単独で作成し、多職種で共同して作成していない。

(3)目標設定等支援・管理料について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 目標設定等支援・管理シートに基づいた説明について、その内容、当該説明を患者等がどのように受け止め、どのように反応したかについて、診療録に記載していない。

(4)摂食機能療法[ 1 ・ 2 ]について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 毎回の訓練内容を診療録に記載していない。

 2 精神科専門療法

(1)通院精神療法について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 当該診療に要した時間又は診療の要点の診療録への記載がない又は不十分である。

(2)その他の精神科専門療法について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 精神科訪問看護指示料について、交付した精神訪問看護指示書等の写しを診療録に添付していない。
② 抗精神病特定薬剤治療指導管理料について、治療計画又は指導内容の要点の診療録への記載がない。


 3 処置

(1)処置料について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 診療録への処置内容の記載が不十分である。

(2)重度褥瘡処置について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 実際に処置を実施した範囲と異なる範囲の区分で算定している例が認められたので改めること。
 ア「100㎠未満」を「100㎠以上500㎠未満」で算定している。

(3)人工腎臓について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 障害者加算
 ア 著しく人工腎臓が困難なものに該当しない患者に対して算定している。
 イ 糖尿病の病名のみで、頻回の処置検査がない患者に対して算定している。

(4)尿道拡張法について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 通常の導尿(基本診療料に含まれるもの)について、導尿(尿道拡張を要するもの)として算定している。

(5)消炎鎮痛等処置について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 医師の指示、実施内容の診療録への記載がない又は不十分である。

(6)処置について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 睫毛抜去について、少数の場合であるにもかかわらず、多数の場合として算定している。

 4 手術

(1)手術について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 手術の内容、合併症及び予後等を文書を用いて詳しく説明していない。
② 説明した内容について、文書で交付又は診療録に添付していない。
③ 手術記録について、適切に記載していない。


3 管理、請求事務、施設基準等に係る事項


 1 診療録等

(1)診療録の様式が、定められた様式(療担規則様式第一号(一))に準じていないので改めること。
① 労務不能に関する意見欄がない。
② 業務災害等に関する欄がない。
③ 診療録第3面(療担規則様式第一号(一)の3)が作成されていない。

(2)電子的に保存している記録の管理・運用について、次の不適切な例が認められたので改めること。
①「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版」に準拠していない。
② パスワードの有効期間を適切に設定していない。パスワードは定期的(2か月以内)に変更すること。
③ パスワードが1文字である例が認められた。パスワードは英数字、記号を混在させた8文字以上の文字列が望ましい。
④ 代行操作の承認の仕組みがない。そのため、根拠のない診療報酬を請求する恐れがあるので、診療報酬の請求は医師が承認した記録に基づき行うよう留意すること。
⑤ 修正履歴が表示されない。
⑥ 特定のIDを複数の職員(医師)が使用している。
⑦ 運用管理規程を定めていない。

 2 診療報酬明細書の記載等

(1)診療報酬明細書の記載等について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 診療報酬の請求に当たっては、医師と請求事務担当者が連携を図り、適正な保険請求を行うこと。また、診療報酬明細書を審査支払機関に提出する前に、医師自ら点検を十分行うこと。
② 実際の診療録の内容と診療報酬明細書上の記載が異なる。(例:傷病名、検査名)
③ 主傷病名は原則1つとされているところ、(非常に)多数の傷病を主傷病名としている。
④ 主傷病名と副傷病名を区別していない。(主傷病名がない。)
⑤ 主傷病名ではない傷病名を主傷病名としている。
⑥ 主傷病名が明確となっていない。主傷病については原則1つとし、複数ある場合は「(主)」などと主傷病が判別できるように記載すること。

(2)摘要欄の記載について
① 特定薬剤治療管理料について、血中濃度を測定している薬剤名等及び初回の算定年月を診療報酬明細書に記載していない。
② 在宅酸素療法指導管理料について、摘要欄に動脈血酸素分圧又は動脈血酸素飽和度の測定結果を記載していない。
③ 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2について、直近の無呼吸低呼吸指数及び睡眠時ポリグラフィ上の所見を記載していない。
④ 血糖自己測定器加算について、血糖自己測定の回数を記載していない。
⑤ 脳血管疾患等リハビリテーション料等について、摘要欄に発症月日、手術月日、急性増悪した月日又は最初に診断された月日を記載していない。
⑥ ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療について、除菌後感染診断を算定する場合に除菌終了年月日を摘要欄に記載していない。

 3 基本診療料

(1)初・再診料について、次の不適切な算定例が認められたので改めること。
① 保険医療機関又は患家以外で診療したものについて算定している。
② 初診について理解が誤っている。
 ア 再診相当であるにもかかわらず、初診料を算定している。
③ 同日初診又は再診について理解が誤っている。
 ア 同一又は互いに関連のある疾病で受診した場合に算定している。
④ 再診料(電話再診を含む、外来診療料について理解が誤っている。
 ア 初診又は再診に附随する一連の行為で来院したものについて再診料又は外来診療料を算定している。
 イ 診療情報提供書のみを受け取りに来院した際に算定している。
 ウ 訪問診療後に薬剤のみを受け取りに来院した際に算定している。
 エ 患者又はその看護に当たっている者から電話等によって治療上の意見を求められて指示をした場合とはいえないものについて、電話等による対応をしたことのみをもって再診料を算定している。

 4 病理診断

(1)病理診断について、次の不適切な例が認められたので改めること。
① 組織診断料
 ア 病理診断を専ら担当する医師がいないにもかかわらず算定している。

 5 特定保健医療材料等

(1)算定要件を満たしていない特定保険医療材料を算定している例が認められたので改めること。
① 24時間以上体内に留置しておらず、その他の規定(6歳未満の乳幼児等)にも該当しない、プラスチックカニューレ型静脈内留置針

 6 一部負担金等

(1)一部負担金の受領について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
① 受領すべき者から受領していない。(例:従業員及びその家族)
② 計算方法に誤りがある。
③ 患者から一部負担金を受領した後に診療報酬の請求内容を変更し、又は減額査定されたことにより、患者から受領した一部負担金額に変更が生じた場合は、差額を徴収又は返金すること。

 7 掲示・届出事項等

(1)掲示事項について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
① 施設基準に関する事項を掲示していない。
② 保険外負担に関する事項を掲示していない。
③ 明細書の発行状況に関する事項を掲示していない。
④ 糖尿病合併症管理料の施設基準に関して、屋内禁煙を行っている旨を掲示していない。
⑤ 機能強化加算の施設基準に関して、地域におけるかかりつけ機能医として、健康診断の結果等の健康管理に係る相談、保健・福祉サービスに関する相談及び夜間・休日の問い合わせの対応を行っている医療機関である旨を掲示していない。
⑥ 地域包括診療加算の施設基準に関して、健康相談を実施している旨を掲示していない。

(2)次の届出事項の変更が認められたので、速やかに届け出ること。
① 診療科の変更
② 保険医の異動

 8 管理、請求事務等に係るその他の事項

(1)届出後に施設基準を満たさなくなった加算については、診療報酬を算定しないだけではなく、速やかに変更(辞退)の届出を行うこと。

(2)請求事務について、診療部門と医事会計部門との十分な連携を図り、適正な保険請求に努めること。

(3)診療報酬の請求に当たっては、全ての診療報酬明細書について保険医自らが診療録との突合を行い、記載事項や算定項目に誤りや不備等がないか十分に確認すること。


4 その他特記事項


審査支払機関からの返戻・増減点通知書について、内容を十分検討し、以後の治療や保険 請求に反映させること。


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個別指導、監査のコラム


近畿厚生局の医科の指導監査の弁護士のコラム一覧です。
個別指導、監査の際に、また日常の医院運営、臨床にご活用下さい。

 個別指導の指摘事項のコラム

平成27年度
1  近畿厚生局の個別指導(1):診療録、傷病名、診療報酬明細書
2  近畿厚生局の個別指導(2):基本診療料、医学管理
3  近畿厚生局の個別指導(3):在宅医療、検査、画像診断
4  近畿厚生局の個別指導(4):投薬、注射、手術、麻酔、院内掲示

平成28年度

5  近畿厚生局の個別指導(5):診療録、傷病名
6  近畿厚生局の個別指導(6):基本診療料、医学管理
7  近畿厚生局の個別指導(7):在宅医療、検査、画像診断
8  近畿厚生局の個別指導(8):投薬、注射、リハビリテーション

平成29年度
9  近畿厚生局の個別指導(9):診療に関する指摘事項
10 近畿厚生局の個別指導(10):請求事務に関する指摘事項

平成30年度
11 近畿厚生局の個別指導(11):医科の診療の指摘事項
12 近畿厚生局の個別指導(12):管理、請求事務の指摘事項

 保険医取消の実例紹介のコラム

1  保険医取消の実例:後発医薬品を先発医薬品とする不正請求
2  保険医取消の実例:診療報酬不正請求による逮捕と保険医取消
3  保険医取消の実例:検査結果の廃棄、保険適用外診療の不正請求
4  保険医取消の実例:死亡患者の診療報酬請求、コンタクトの不正
5  保険医取消の実例:鍼灸院や整骨院との不正請求、診療録の不作成
6  保険医取消の実例:監査の不出頭、カルテの改ざんによる取消処分
7  保険医取消の実例:無診察処方、無診察投薬による取消処分
8  保険医取消の実例:個別指導中の医師の入院と指導の延期
9  保険医取消の実例:個別指導の中断、中止、監査での取り消し
10 保険医取消の実例:架空請求の情報提供での保険医の取り消し
11 保険医取消の実例:廃止した医院への個別指導を経ない監査
12 保険医取消の実例:患者の情報提供による個別指導
13 保険医取消の実例:医師の名義貸しでの個別指導、監査
14 保険医取消の実例:無診察での不正請求
15 保険医取消の実例:無診察診療での個別指導
16 保険医取消の実例:再指導での個別指導からの監査
17 保険医取消の実例:刑事事件の有罪判決での保険医取消処分
18 保険医取消の実例:訪問看護ステーションへの個別指導
19 保険医取消の実例:子供の診療での不正請求
20 保険医取消の実例:14日後付け処方せんでの個別指導

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