医科の指導監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。
サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、個別指導の対応業務を行っています。
指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。
ここでは、厚生労働省の保険局医療課医療指導監査室が公表した、医科の保険診療確認事項リスト(診療録、傷病名の部分)をご紹介します。平成30年度改訂版ver.1809に基づいており、弁護士鈴木が適宜加筆修正等しています。
また、個別指導については、以下のコラムもご参考下さい。
1 個別指導(医科)の上手な対応法
診療に係る事項
1 診療録
□(1)診療録への必要事項の記載について、次の不適切な例が認められたので改めること。
□診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項の記載を十分に行うこと(特に、症状、所見、治療計画等について記載内容の充実を図ること)。
□① 診療録について
□・医師による日々の診療内容の記載が[ 全くない ・ 全くない日が散見される ・極めて乏しい ]。
□・[ 医師の診察に関する記載がなく ・ 「薬のみ(medication)」、「do」、「消炎鎮痛等処置」等の記載で ]、[ 投薬 ・
消炎鎮痛等処置 ・ ]等の治療が行われている。
□診療録の記載がなければ医師法で禁止されている無診察治療とも誤解されかねないので改めること。
□② 診療録第1面(療担規則様式第一号(一)の1)及び診療報酬明細書に記載している傷病名について、その傷病を診断した経緯又は根拠について診療録への記載が[ ない・ 不十分である ]。
□③ 傷病手当金に係る意見書を交付した場合であるにもかかわらず、労務不能に関する意見欄への記載がない。
□④ 診療録第3面(療担規則様式第一号(一)の3)に患者から徴収する一部負担金の徴収金額が適正に記載されていない。
□⑤ 確定済みの診療録に追記を行うにあたって[ 追記者 ・ 追記日時 ]が明確にされていない。
□⑥ 同一日の再診について、診療録への記載が[ ない ・ 画一的である ・ 不十分である ]。
□⑦ やむを得ない事情で看護に当たっている者から、症状を聞いて薬剤を投与した場合について、診療録への記載が[ ない ・ 画一的である ・
不十分である ]。
□(2)紙媒体の記録について、次の不適切な例が認められたので改めること。
□① 記載内容が判読できない。
□② 時系列で診療録の記載がなされていない。
□③ [ 事前に ・ 鉛筆で ]記載している。
□④ [ 修正液 ・ 修正テープ ・ 塗りつぶし ・ 貼紙 ]により修正しているため修正前の記載内容が判別できない。修正は二重線により行うこと。
□⑤ 余白が多い場合は斜線を引いて「以下余白」とし、追記できないようにすること。
□⑥ 診療録について、完結の日から5年経過していないにもかかわらず処分している。
□⑦ 検査結果や診療情報提供書の写しについて、全患者分を一元的に管理している。患者それぞれの診療録に添付又は貼付し、個々の患者毎に管理すること。
□⑧ 複数の保険医が一人の患者の診療に当たっている場合において、署名又は記名押印が診療の都度なされていないため、診療の責任の所在が明らかでない。
□(3)診療録について、次の不適切な事項が認められたので改めること。
□① 保険診療の診療録と保険外診療(自由診療、予防接種、健康診断等)の診療録とを区別して管理していない。
□② 医師が自分自身の診療録に自ら記載(自己診療)している。医師は必ず、別の医師の診療に基づいて検査・投薬・注射等を受けた場合にのみ保険請求できることに留意すること。
□③ 医療保険に関する記載と介護保険に関する記載が区別されていない。医療保険と介護保険の記載を一つの診療録に記載する場合は、下線又は枠などで区別すること。
□④ 訪問診療と訪問看護のいずれを実施したものであるのか判別できない。
2 傷病名
□(1)傷病名の記載又は入力について、次の不適切な例が認められたので改めること。
□① 診療録に傷病名を全く記載していない。
□② 診療録と診療報酬明細書の記載が一致しない。
□③ 「傷病名」欄への記載は、1行に1傷病名を記載すること。
□④ 傷病名を診療録の傷病名欄から削除している。当該傷病に対する診療が終了した場合には、傷病名を削除するのではなく、転帰を記載すること。
□⑤ 請求事務担当者が( 医事会計システムから )[ 傷病名 ・ 転帰 ]を[ 記載・ 入力 ]している。傷病名は、必ず医師が[ 記載 ・
病名オーダー画面から入力 ]すること。
□⑥ 傷病名の[ 開始日 ・ 終了日 ・ 転帰 ]の記載がない。
□⑦ 傷病名の記載が[ 一部 ・ 多数 ]漏れている。
□⑧ 主病の指定が適切に行われていない。
□(2)傷病名の内容について、次の不適切な例が認められたので改めること。傷病名は診療録への必要記載事項であるので、正確に記載すること。
□① 医学的な診断根拠がない傷病名
□② 医学的に妥当とは考えられない傷病名
□③ 実際には「疑い」の傷病名であるにもかかわらず、確定傷病名として記載しているもの
□④ 実際には確定傷病名であるにもかかわらず、「疑い」の傷病名として記載しているもの
□⑤ 次の記載がない傷病名
急性・慢性
左右の別
部位
詳細な傷病名
分類
病型
その他
□⑥ 単なる状態や傷病名ではない事項を傷病名欄に記載している。傷病名以外で診療報酬明細書に記載する必要のある事項については、摘要欄に記載するか、別に症状詳記(病状説明)を作成し診療報酬明細書に添付すること。
□(3)検査、投薬等の査定を防ぐ目的で付けられた医学的な診断根拠のない傷病名(いわゆるレセプト病名)が認められた。レセプト病名を付けて保険請求することは、不適切なので改めること。診療報酬明細書の請求内容を説明する上で傷病名のみでは不十分と考えられる場合には、摘要欄に記載するか、別に症状詳記(病状説明)を作成し診療報酬明細書に添付すること。
□① [ (検査)]の実施に際して付与した「 」
□② [ ]の[ 適応外 ・ 予防 ]投与に際して付与した「 」
□(4)傷病名を適切に整理していない例が認められた。傷病名には正しい転帰を付して、適宜整理すること。
□① 整理されていないために傷病名数が多数となっている。
□② 長期にわたる「疑い」の傷病名
□③ 長期にわたる急性疾患等の傷病名
□④ 重複して付与している、又は類似の傷病名
□⑤ その他、傷病名の整理が不適切な例
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指導監査のコラム
医科の指導監査のコラムです。
個別指導、監査の際に、また日常の医院運営、臨床にご活用下さい。
保険診療の確認事項リストのコラム
1
保険診療確認事項リスト(1):診療録、傷病名
2
保険診療確認事項リスト(2):基本診療料(初診料)
3
保険診療確認事項リスト(3):医学管理(特定疾患治療管理料)
4
保険診療確認事項リスト(4):在宅医療(訪問診療料)
5
保険診療確認事項リスト(5):検査、画像診断、病理診断
6
保険診療確認事項リスト(6):投薬、注射、薬剤料
7
保険診療確認事項リスト(7):リハビリテーション
8
保険診療確認事項リスト(8):精神科専門療法、処置、手術
9
保険診療確認事項リスト(9):薬剤(薬剤管理指導料)
10
保険診療確認事項リスト(10):看護、食事、寝具
11
保険診療確認事項リスト(11):管理、請求事務、施設基準
12
保険診療確認事項リスト(12):包括評価(DPC)
保険医取消の実例紹介のコラム
1 保険医取消の実例:後発医薬品を先発医薬品とする不正請求
2 保険医取消の実例:診療報酬不正請求による逮捕と保険医取消
3 保険医取消の実例:検査結果の廃棄、保険適用外診療の不正請求
4 保険医取消の実例:死亡患者の診療報酬請求、コンタクトの不正
5 保険医取消の実例:鍼灸院や整骨院との不正請求、診療録の不作成
6 保険医取消の実例:監査の不出頭、カルテの改ざんによる取消処分
7 保険医取消の実例:無診察処方、無診察投薬による取消処分
8 保険医取消の実例:個別指導中の医師の入院と指導の延期
9 保険医取消の実例:個別指導の中断、中止、監査での取り消し
10 保険医取消の実例:架空請求の情報提供での保険医の取り消し
11 保険医取消の実例:廃止した医院への個別指導を経ない監査
12 保険医取消の実例:患者の情報提供による個別指導