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弁護士による、医道審議会の行政処分(医師免許取消)の執行停止の判例紹介です。医道審議会に臨む医師の方は、医道審議会に強い弁護士にご相談下さい。

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3 医道審議会の判例(3):行政処分(医師免許取消)の執行停止

医道審議会に強い、医師のための弁護士です。

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弁護士鈴木が力を入れている医道審議会のコラムです。

ここでは、医師の非違行為による、医道審議会の医師免許取消しの行政処分についての、執行停止申立事件の判例のご説明を致します。取り上げる判例は、平成17年4月26日東京地方裁判所の判決(決定)です。説明のために、事案等の簡略化等をしています。

医道審議会の行政処分に臨む医師の方は、医道審議会に強い弁護士への相談をお勧めします。医道審議会は、弁護士のサポートを受けるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

1 弁護士による医道審議会の対応法

弁護士の判例紹介:医師免許取消の執行停止の裁判の実例


 1 事案の概要

医師免許の取消処分を受けた医師が、当該処分の取消しを求める訴訟(本案)を提起した上、当該訴訟の判決確定に至るまで、当該処分の効力停止を求めている事案です。

弁護士が判決文からまとめた事案の概要は以下のとおりです。

1 申立人医師の身上
申立人(大正15年3月生)は、本件免許取消処分が効力を生ずるまでの間、産婦人科を専門とする医師であった者である。

2 申立人医師の非違行為
相手方は、申立人が昭和49年から54年にかけて次の行為(以下、これらを併せて「本件非違行為」という。)をしたとして、医師法7条2項所定の医師免許取消し又は医業停止処分をするか否かを判断するために聴聞手続を行うこととし、申立人に対し、平成17年1月24日付け聴聞通知書を送付した。

ア Aについて、子宮及び右付属器は手術適応となるような病態でなかったにもかかわらず、慎重な検討を行うことなく、昭和49年12月20日、子宮全摘除術及び右付属器摘除術を行い、摘出する必要のない子宮及び右付属器を摘出した。
イ Bについて、不妊症と診断していないにもかかわらず、慎重な検討を行うことなく、昭和54年7月27 日、不妊症の治療である両側卵巣楔状切除術及び円靱帯短縮術を行った。
ウ Cについて、挙児がなく、挙児を希望しており、子宮及び両側付属器は手術適応となるような病態でなかったにもかかわらず、慎重な検討を行うことなく、昭和51年6月9日、子宮膣上部切断術及び両側付属器摘除術を行い、摘出する必要のない子宮及び両側付属器を摘出した。
エ Dについて、子宮及び両側付属器は手術適応となるような病態でなかったにもかかわらず、慎重な検討を行うことなく、昭和50年2月28日、子宮及び両側付属器の摘出手術を行い、摘出する必要のない子宮及び両側付属器を摘出した。

3 本件処分、本件処分の取消訴訟に至る経緯
平成17年2月16日、上記聴聞手続が実施された。

相手方は、同年3月2日、医道審議会より申立人につき医師免許取消相当との答申を受け、同日付けで、申立人に対し、本件非違行為が医師法4条4号に該当するため、同法7条2項に基づき、同月16日をもって医師免許を取り消すとの命令書を作成し、同命令書は同月5日、申立人に到達した(本件処分)。

申立人は、相手方に対し、同月11日、本件処分の取消しを求める訴えを提起した。

 2 争点及び裁判所の判断

弁護士が判決文からまとめた争点と裁判所の判断は以下のとおりです。

争点1 処分で生じる重大な損害を避けるための緊急の必要の有無
【裁判所の判断】
行政処分の効力の停止等は、処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときにのみ認めることができ、重大な損害が生ずるか否かを裁判所が判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮し、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている(行訴法25条2、3項)。

執行停止の制度は、ある行政処分につき取消訴訟が提起されても、処分の効力等はこれにより妨げられず処分の所期の目的を実現し得ることを前提として(同条1項)、限定された要件の下に例外的にこれを停止しようとする制度であるから、前記「重大な損害」を生ずるか否かを判断するに当たっても、その執行等により維持される行政目的達成の必要性を一時的に犠牲にしてもなお救済しなければならない程度に重大な損害を避ける緊急の必要性があるか否かが勘案されるべきであり、行訴法25条3項において考慮すべき事項とされている「処分の内容及び性質」も、このような見地からの検討をもその考慮事項の1つとする趣旨の規定であると解するのが相当である。

これを本件についてみると、申立人は、医師免許取消処分(本件処分)は違法であり、かつ、これによって重大な損害を受けるおそれがあるとして、その効力停止を求めているのであるが、本件処分の効力を停止するということは、申立人に医師としての活動を許容するということを意味するところ、医師の業務は、国民の健康や安全に直結するものであって、適格性を欠く者がこのような業務に従事することは、本来許されない事柄なのであるから、執行停止の可否を判断するに当たっても、このような処分の内容及び性質を踏まえた考慮をする必要があり、執行停止の要件該当性については、相当程度の疎明が必要になるものと解すべきである。

ところで、相手方は、申立人が、患者3名に対し、手術適応となるような病態がないにもかかわらず子宮及び両側付属器の摘出手術等を行ったこと、及び不妊症との確定診断を経ていない患者1名に対し、不妊症の治療である両側卵巣楔状切除術及び円靱帯短縮術を行ったことを非違行為(本件非違行為)として、本件処分を行ったものであるところ、これらの行為は、それが事実であるとすれば、いずれも医師としての適格性に重大な疑問を投げかけるものであるといわざるを得ない。そして、一件記録に照らして検討しても、
@申立人が現在年金を受給しており、診療を停止しても最低限の生活を営むことができることは申立人自身が認めるところであって、申立人が、本件処分によって収入が途絶し、その生活に困窮するといった事情を認めることはできないし、
A本件クリニックの経営そのものは、他の医師の協力を得ることなどによって再開することも可能である以上、本件処分によって、本件クリニックが倒産の危機に瀕するとまではいうことはできず(なお、本件クリニックの土地建物の所有者は申立人の親族らであって、申立人が他の医師の協力を得ることによって同クリニックにおける診療を再開すること、仮に本案判決で申立人が勝訴し医師免許を回復した場合に申立人自身が同クリニックにおいて診療を再開することが困難であるとまでは一応認めることができない。)、
B申立人自身が医療に従事することによって得られるはずの充実感などといった人格的利益が損なわれるという点は、主観性の高い利益であって、重大な損害という評価に値するかどうかに疑問の余地があり、
C申立人の診療を受けられない患者の不利益は、申立人自身の損害と評価することができるものではない上、本件クリニックの周辺にも多数の産婦人科病院又は診療所が存在することからすると、患者に上記のような不利益が生じるかどうかにも疑問の余地があるのであって、
これらの点からすれば、本件処分の効力停止を正当化するほどの「重大な損害」の疎明がされているものということは困難であり、他にこの判断を左右するに足りる資料を見出すこともできない。

もっとも、この点、本件非違行為が全く事実の基礎を欠き本件処分が相手方の有する裁量権を逸脱濫用するものでその違法性が明らかであるなどといった特段の事情があるときまで、「重大な損害」の有無を判断するに当たり、当該処分の内容等を考慮するのは相当ではないといった反論もあり得よう。
しかしながら、本件についてみれば、別件訴訟において審理が尽くされた結果、本件非違行為に相当する事実がある旨の認定がされ、上告審においてその判断が確定していることは前説示のとおりであって(申立人自身は、本件非違行為等の存在を認定した別件訴訟一審判決に対して控訴をしていないが、他の勤務医らが、控訴、上告をし、手術適応の有無等を巡り審理が続けられた結果、最終的には、上告棄却判決によって、同医師らの敗訴が確定している。)、このような別件訴訟の結果は、重視せざるを得ない事実であることなどの事情を考慮すると、本件処分の適否の判断については、今後の本案訴訟の審理に待つべき点が残されているとしても、現段階において当事者双方から提出された疎明資料による限り、本件非違行為が濡れ衣であって、本件処分が違法であることは明らかであるということは到底困難であるというほかはない。

そうすると、本件において、裁判所が「重大な損害」の有無を判断するに当たり、本件非違行為の内容及びこれを前提としてなされた本件処分の内容性質を考慮することは何ら不当なものではないというべきである。
以上によれば、本件申立てについては、少なくとも、「重大な損害を避けるため緊急の必要性」があるということはできないものと解される。

 3 判決(決定):結論

主文:本件申立てを却下する。

本件申立ては、その余の点につき判断するまでもなく理由がないからこれを却下することとし、申立費用の負担について、行訴法7条、民訴法61条を適用して主文のとおり決定する。


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